関西学院高等部ラグビー部は1948年創部。2020年の「第100回全国高校ラグビーフットボール大会(通称:花園)」では、5年ぶり7度目となる出場を果たす。
「オールK.G.」の文化を、次世代へと引き継ぐ。
平生 翔大 Hirao Shodai
関西学院高等部
3年生
「Team2020」主将、HO(フッカー)。小学校からラグビーを始め、5年生で関西学院初等部に編入。第100回全国高校ラグビーフットボール大会では優秀選手30名の一人に選出。
田畑 美波 Tabata Minami
関西学院高等部
3年生
「Team2020」マネージャー。中学生時代はソフトテニス部に所属、主将を務めた。関西学院高等部では、ラグビー部のマネージャーになり、チームを支える。
お互いに支え合う、なくてはならないチームのメンバー。
まず平生さんから、ラグビー部に入部したきっかけを教えてください。
平生小学校5年生の時に関西学院高等部が「第90回全国高校ラグビー大会」に出場。ノーシードながらベスト4に進出した試合を観て、僕も関学のジャージを着てラグビーをしたいと思い、関西学院初等部に編入しました。
田畑さんが、ラグビー部のマネージャーになろうと思ったのはなぜだったのですか。
田畑中学校ではソフトテニス部で主将も務めましたが、高校では自分がプレーをするのではなく支える側になろうと思っていました。ラグビー部を見学した時、メンバー全員が拍手で迎えてくれて、その温かい雰囲気に惹かれてこの部に入りたいと思いました。
マネージャーとして、どんなお仕事をしているか、どんなことを心がけているかを教えてください。
田畑練習中のプレーの録画、選手が飲む水の用意や選手のテーピングの発注など、様々な仕事をしています。他校の方や取材に来られた記者の方など、外部の方への対応をする機会も多いです。マネージャーとして、「選手を一番に考えること」を心がけ、部活動に参加しています。
平生さんがキャプテンとして心がけているのはどんなことですか。
平生ラグビーでも私生活においても、キャプテンであり続けることです。試合中はチームの最前列で体を張り、一番声を出して、自分の思いを行動や言葉でメンバーに伝えるよう心がけています。私生活では周囲へのあいさつや、落ちているゴミを拾うといった「当たり前のこと」を大切にしています。
2020年はコロナ禍の中、どのように部活動に取り組んできましたか。
平生試合や練習などに多くの影響があり、「当たり前」の大切さを実感しました。自粛中は新入部員とも顔を合わせることができなかったため、学校から1人1台支給されているタブレット端末を活用。オンラインでミーティングしたり、雑談をしたりして、交流を深める機会をつくりました。また、規則正しい生活リズムや体づくりにつながるよう、朝は全員がオンラインに集ってごはんを食べました。
田畑外部に対しては、SNSを通じてラグビー部の現在の活動状況などを紹介。コロナ禍だからこそ、発進力を強化して関学のラグビーをより多くの方に知ってもらえるよう取り組みました。
平生先生のアドバイスもいただきながら、制限の多い状況下でも一人ひとりが自分たちにできること、部のプラスになることを考え行動しました。
選手とマネージャー、先生というチームで一丸となって立ち向かったのですね。
では今まで、自分自身が課題に直面した時、それをどう乗り越えてきましたか。
平生最も心に残っているのが、高校2年生の時に、僕がゲームキャプテンを務めた試合です。ワントライ差で負けたのですが、それがとても悔しくて。同時にワントライ差をわずかな差ではなく、大きな差として重く受け止め、何が足りなかったのかを考えました。ラグビーに向き合う姿勢やキャプテンの役割を改めて見つめ直したことで、新チームの主将として前向きに頑張っていけたと思います。
田畑1、2年生の頃は先輩がお手本でしたが、3年生になると自分ひとりで判断していくことに不安やプレッシャーを感じていました。でも、選手のみんなが進んで荷物を運んでくれたり、周囲への指示を手伝ってくれたり。どんな些細なことでも「ありがとう」と言ってくれることや、試合に勝って喜んでいる姿なども原動力になって、乗り越えられました。
平生さんと田畑さんにとって、お互いはどのような存在ですか。
平生田畑はみんなから信頼される、チームになくてはならない存在です。いつも選手の様子に目を配り、意図を的確に汲み取ってサポート。僕たちがベストな状態で練習できるのはマネージャーの支えのおかげだと、とても感謝しています。
田畑キャプテンとしても人としても頼りになる存在です。部員47人の1人も欠けてはいけないけれど、中でも翔大はみんながついていきたいと思える掛け替えのないリーダーです。
「オールK.G.」で引き継ぐ、関学ならではのラグビー文化。
主将の平生さん率いる「Team2020」は、花園に5年ぶりに出場しました。
2回戦で惜しくも敗退しましたが、最後までディフェンスをやり通す姿が印象的でした。その時、どんな思いで試合に向き合っていたのですか。
平生ずっと押されぎみだった中、メンバーとはこれまで自分たちがやってきたことに戻ろうと話していました。僕たちは毎日タックルの練習をやっていて、ディフェンスには自信やプライドを持っています。その原点であるディフェンスを、最後までしっかりやり抜こうと思っていました。
田畑マネージャーとして3年間、選手をずっと見てきたので一緒に花園の第一グラウンドに立った時は感無量でした。試合終了まで残り3分のタイムを提示しながら、みんながひたむきにプレーする姿に自然と涙ぐんでいました。
関学ラグビー部は、ただひたすらに「ひたむき」なラグビーを信条とされています。その言葉を体現するようなプレーでしたね。
平生ラグビー部には代々伝わっている「七つの言葉」があります。それが「気持ちの良いあいさつ」「清潔感あふれるプレーヤー」「常に精一杯」「感謝の気持ち」「自主性」「信頼」「明るさ」です。先輩方から脈々と受け継がれてきた関学のラグビー文化が、僕たちの土台になっているのだと思います。
そのラグビー文化の魅力は、どういうところだと思いますか。
平生初等部から大学というタテのつながりです。中高大が同じグラウンドで練習したり、毎年恒例のイベント「関西学院ラグビーカーニバル」では小学生から大学生までが一緒にタグラグビーをしたり。「オールK.G.」でラグビーに取り組み、次の世代を育んでいく環境は関学ならではの魅力だと感じます。
では部活動を通じて、得たもの、身についた力を教えてください。
平生ラグビー部が大切にしている7つの言葉を、部活動を通して学び、私生活でも実践できる力が身についたと思います。
田畑礼儀やコミュニケーション、仲間など、得たものは大きいです。常に周りを見て行動していたので、視野が広がり、客観的に物事を捉えられるようになりました。
身についた力を、今後どのように活かしていきたいですか。
平生先輩から受け継いだ関学ラグビーを後輩に引き継ぎ、花園での悔しい経験から得た学びを大切にして大学でもラグビーに取り組んでいきます。
田畑大学や社会という新たな環境でも、視野を広く持って、相手の立場で物事を考えながら人と接していきたいです。
将来の夢や目標を教えてください。
平生ラグビー選手になって、ワールドカップに出場することです。自分のためでもありますが、学校や家族、メンバーには「ありがとう」の言葉だけでは足りないほど支えてもらいました。感謝の気持ちを行動でも示して、みなさんに恩返しをしていきたいです。
田畑様々な方と関わる機会に恵まれたので、将来は人と接するような仕事をしたいです。大学では、ラグビー部での経験を活かせるような新しい目標を見つけたいと思います。