私のKG相関図

Vol.2 関西学院大学 工学部 井村研究室

好奇心と情熱が研究の原動力。
切磋琢磨しながらまだ見ぬ未来の可能性を探る

独創的な発想と幅広いアプローチで挑む、バーチャルリアリティ(VR)研究の最前線

写真前列左・吉村さん、後列左から井村教授、河盛さん、田中さん

Profile

工学部
井村 誠孝教授

工学部 4年
田中 克尚さん

理工学研究科 人間システム工学専攻
博士課程 前期課程 2年
吉村 崚さん

理工学研究科 人間システム工学専攻
博士課程 後期課程 3年
河盛 真大さん

技術と創造力を互いに磨き合い、バーチャル世界と実世界の新たな融合に挑む。

井村私の研究室では、主にバーチャルリアリティ(VR)技術を活用した研究に取り組んでいます。VRは人間の五感を刺激し、その場に存在しないものをあるように感じさせる技術。ゲームのイメージが強いかもしれませんが、視覚だけでなく、手触りやにおい、味などの再現も可能で、医療や防災、観光といった様々な分野での応用が期待されています。

河盛私が最初にVRに興味をもったのは小学生の頃で、きっかけはまさにゲームでした。中でもVRと医療の融合領域に関心があり、井村研を志望しました。

田中友人からVRの話を聞き、将来性のある面白い技術だと感じたのが高校の時。専門的に学べる環境を調べ、井村先生のもとで研究したい一心で関学を受験しました。

吉村先生がおっしゃったように、VRの魅力はその応用範囲の広さにあります。自分の好きなことを自由に研究できそうだと感じ、所属を決めました。

井村3人もそうですが、自分の興味や趣味を掘り下げて探究している人は多いですね。テーマに関しても、VRに限らず、「人工物で人を幸せにする研究」であればどんなアイデアでも歓迎です。研究は楽しく、自主的に進めることが何より大切ですから。

現在取り組んでいる研究テーマを教えてください。

河盛視力回復を目的としたVRゲームの開発と、視力回復効果の検証を行っています。「VRゲームで視力が改善した」という複数の口コミを目にしたことが、この研究の出発点。実際に、若年層に対する実験の結果、目の筋肉の緊張により一時的に近視状態になる「偽近視」という症状に関しては、一定の回復効果が確認できました。

田中人間の生体信号である筋電位を活用し、eスポーツ選手やプロゲーマー向けの「高速入力が可能なキーボード」を開発中です。例えば格闘ゲームの世界は0.016秒の差が勝敗を分けますが、指を動かす際に発生する筋電位を捉えることにより、0.03秒の入力速度の短縮を実現しました。

吉村長年取り組んできたサッカーを題材に、「スペースの可視化」に挑戦しています。サッカーで重要なのは、空いたスペースに走ったり、パスを出したりして攻撃のチャンスをつくること。このスペースを試合の動画から検出できるシステムを構築し、選手や観戦者に新たな視点を提供できればと考えています。

日々研究に励む皆さんのモチベーションは何ですか?

河盛やはり「好き」という気持ちに尽きますね。好きだからこそ妥協せず、心折れることなく続けられていると思います。

吉村想定通りに実装できた時の達成感が原動力です。プログラミングにはエラーがつきものですが、それを一気に解消できた瞬間は大きな充実感を覚えます。

田中学会や「IVRC」というVR作品のコンテストに参加したことがあるのですが、自分の展示作品を体験した人が喜ぶ姿を見た時は、全ての苦労が報われた気がしました。
※IVRC(Interverse Virtual Reality Challenge):学生を中心としたチームでVR・インタラクティブアート作品を企画・制作するコンテスト。

学会発表でも受賞!

井村皆さん真面目で、研究に限らず何事にも真摯に取り組んでいる印象があります。学外でのデモ展示や高校生の見学受け入れの際も、サービス精神を発揮して対応してくれるので、学外の方から感心されることも。関学のスクールモットーである「Mastery for Service」を体現してくれて嬉しい限りです。

今後の研究の展望を教えてください。

田中開発中のキーボードの精度をさらに高め、実際に活用してもらえるレベルまでもっていくことが当面の課題です。

吉村撮影映像だけではなくリアルタイムの試合でスペースを可視化したうえで、VRの一種であるAR(拡張現実)を用いて、より分かりやすく提示したいと考えています。

河盛「若年層」の「偽近視」以外にもVRによる視力回復効果があるのかを検証する予定です。また、視力が低下すると認知症の発症率が高まることが知られており、研究を通して認知症予防に貢献したいという目標もあります。

井村研究室の皆さん、そして関学生の皆さんには、目の前の課題に全力で向き合う「短期的視点」と、自分や社会のあるべき姿を思い描く「長期的視点」の両方を兼ね備えてほしいと思います。貴重な大学・大学院時代に大いに吸収と試行錯誤を繰り返し、これからの人生の糧にしてください。