Vol.1 総合政策学部 山田ゼミ
企業の技術力と学生の創造力が結実。
『World Robot Summit』の優勝チームが見つめる先は、
人とテクノロジーが調和した社会
産学連携の力で、災害時に希望を見出すドローンシステムの開発を推進
後列左から平岡さん、那須さん、山田教授、前列左から藤原さん、成田さん、永富さん
Profile
総合政策学部
山田 孝子教授
総合政策学部 3年
永富 雄也さん
総合政策学部 3年
成田 健吾さん
総合政策学部 3年
藤原 悠雅さん
操学舘
平岡 欣也さん
操学舘
元後援会会員同窓生(OB)
那須 善行さん
『World Robot Summit』に出場したきっかけを教えてください。
那須私たち株式会社那須管財は、事業の1つとして次世代モビリティ関連事業に取り組んでいます。その一環で、国土交通省から無人航空機の登録講習機関の認定を受け「操学舘ドローンスクール」を運営。ドローンの最大の価値は、災害現場など人が立ち入るには危険な場所であっても、迅速かつ俯瞰的に情報を集められることです。私たちの事業の根底には、発災時に一人でも多くの命が救われる社会を作りたいという想いがあります。救助の現場で役立つテクノロジーをさらに磨くため、災害対応の技術を競う世界大会『World Robot Summit(以下、WRS)』への挑戦を決意。しかし、弊社にはドローンの操縦技能やメカニズムに関するいわゆるハード面のノウハウはあっても、高度な映像解析を行うソフト開発の領域を独自で進めるには限界がありました。そこで、母校である関西学院大学の山田孝子教授のゼミに、専門技術を補うパートナーとして相談を持ちかけたのが始まりです。
山田那須さんにお話をいただき、2025年4月に「Team Sogakkan」として共同研究を開始しました。10月の大会まで半年という短期間でしたが、ビジネスとして確実な成果が求められるこの機会は、学生たちが社会で生き抜くための主体性を養う素晴らしい経験になると確信していました。
成田私は山田先生の授業から伝わってくる「実社会の構造に深く踏み込む姿勢」に感銘を受けて山田ゼミを選択。そのため、先生からこの大会のお話を聞き、実際の社会課題に取り組める絶好の機会だと感じました。信頼している友人の永富くんと藤原くんを誘い共同で活動を開始。私たちゼミ生が担当したのは、ドローンが捉える映像から、リアルタイムで物体を認識するAIシステムの開発です。操学舘の方が開発・操縦するドローンに、自分たちのソフトを実装し、大会で課せられる課題に立ち向かうための準備が始まりました。
永富開発期間中、最も苦労したのは厳しい時間の制約があったことです。大会側からのルール変更が頻繁にあり、そのスピード感に対応するため、生成AIを戦略的に活用しました。しかし、すべてをAIに頼るわけではなく「自分が理解できないコードは絶対に使わない」という独自ルールを徹底。AIが出した答えを鵜呑みにせず、自分たちの手で制御し、理解する。このルールを採用したことにより、予期せぬエラーが出ても現場ですぐに修正できる強固なシステムを構築できたのだと思います。
世界大会への出場はいかがでしたか。
藤原WRSは福島ロボットテストフィールドで3日間にわたり開催。山田先生と、私を含む3人のゼミ生、そして那須管財の社員の皆さんで挑みました。競技の課題は、ポールに設置された筒の中にあるランドルト環の向きをAIに認識させるというもので、ちょうど視力検査のような要領でした。ドローンを飛ばすコースにはチェーンやネットなどの障害物も設置されており、飛行は一筋縄ではいきません。また、災害現場での実装を想定した大会なので、毎日新しい課題が出題されます。そのたびに対策を考え、夜間はAIの学習とシステムの調整を繰り返すという濃密な3日間でした。大会の裏側では、神戸三田キャンパス(KSC)にいる人工知能を専門に扱う大用ゼミのメンバーが、遠隔で強力にサポートしてくれました。彼らのバックアップのおかげで、現場での急な仕様変更にも対応できたと感じます。

永富大会中は、ドローンを実際に操縦する操学舘の平岡さんと何度も調整を重ねました。平岡さんたちプロの皆さんが見せる熱意を肌で感じ、僕たちも「確実な成果を出さなければならない」という強い責任感に突き動かされた場面も。プレッシャーはありましたが、それがお互いへの信頼につながり、チームが1つになっていくのを実感しました。
平岡学生たちの対応力には非常に驚かされました。こちらの要求に対し、即座に具体的な提案を返してくれ、もはや学生という感覚はなく、対等なパートナーとして非常に心強かったですね。私自身、彼らからたくさんのことを教わりました。
那須結果として「標準性能評価ドローンチャレンジ(STM)部門」で優勝し、経済産業大臣賞を受賞することができました。我々の操縦技能並びにハード面のノウハウと、学生たちが創意工夫により開発してくれたソフトが見事に融合し、非常にバランスの良いチームだったと感じます。
大会を通じて学んだことや、今後の展望を教えてください。
成田今回の経験で一番の学びは、システムは「現場で使えないと意味がない」ということです。災害現場でのドローン活用は、多くの危険回避につながります。だからこそ「実際に使う人にとって役に立つのか」という目線が大切になると心から実感できました。
藤原学生の立場で、世界大会というこれほど大きな舞台に立てる機会はそうありません。「このチャンスを活かさない手はない」という思いが、大会へのモチベーションとなりました。学内の枠を超え、企業の方々と協働し、デジタル技術を活かした社会貢献に全力で取り組んだ時間は、私にとって素晴らしい経験になったと思います。
平岡仕事をする上で技術を磨くことはもちろん必要ですが、そこには人間性もなくてはならないと考えています。今回の共同研究を通じて、関学生の皆さんからは人としての魅力を強く感じ取ることができました。これだけやり抜く力があれば、どこへ行っても活躍してくれると確信しています。彼らが自分の好きな道に進み、社会で活躍する姿を見るのが今から本当に楽しみです。
那須次世代の皆さんには、有益な技術を社会実装するための応用研究にぜひ打ち込んでほしいです。彼らにはそれができるポテンシャルがあると感じています。
山田私はいつも学生たちに「仕掛けられる側」ではなく「仕掛ける側」になってほしいと伝えています。人が作った道具で仕事をしているうちは、その人の手のひらを抜け出せません。いずれは道具そのものを自分で作っていける人になってほしい。技術革新のセンスを磨き、社会で生き残るテクノロジーを見分ける「目利き」となって羽ばたいてくれることを期待しています。
