KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.15

KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.15

Student's Profile

「スタジオMOVEDOOR」

2018年11月、関西学院大学神戸三田キャンパスの仲間たち4人で設立。「ローカルクリエイター集団」の名の通り、拠点である三田市内の自治体や企業・団体とのつながりを大切にしつつ、事業成長や地域振興に努めている。着実に実績と信頼を積み重ね、現在6人。尼崎市など対象エリアも広がるなか、取り組む分野も多様化を続けている。
▶PR、広報戦略構築&実行 ▶動画・写真・WEBサイト各デザイン(パンフ、ロゴ、チラシ、名刺、グッズ等) ▶WEBメディアの共同運営(求人サイト「三田の仕事」) ▶商品企画・新規事業の立案 ▶企業・商品ブランディング ▶広告運用(メディア出稿・SNS広告・WEB広告) ▶空き家再生事業、場づくり(学生拠点プロジェクト) ▶オンラインサロン設立運営(「若者まちづくりサロン」)

中岡 尚哉 (左)

なかおか なおや/関西学院大学理工学部人間システム工学科 4年生。MOVEDOORには2019年12月頃に参加。現在、映像クリエイターを務める。

高橋 圭司 (右)

たかはし けいじ/関西学院大学理工学部数理科学科 4年生。MOVEDOORの創業メンバーの一人。2018年11月の設立から参加し、現在はデザイナーを務める。

神戸三田キャンパスの学生たちが在学中に起業したというニュースから2年。その会社、「スタジオMOVEDOOR」は地元三田市で地域振興の一翼を担う存在へと成長していました。学生でありながら地域・社会とリアルに向き合うことから生まれた変化とは?そんな挑戦を後押ししてくれる環境とは?現在も理工学部の在学生であるお二人にお話をお聞きしました。

― お二人は、理工学部の学生でありながら、同時にビジネスも行われているそうですね。その「スタジオMOVEDOOR」とはどのような企業なのですか?

中岡 私たちのホームページでは「ローカルクリエイター集団」と紹介しています。キャンパスがある三田市を拠点に関学出身者6人がともに活動しています。

高橋 同じくホームページでは「制作物を売る制作会社ではなく、成長と変化を売るPR会社へ」と書いています。「ポスターやパンフレットをつくること」が目的のデザイン会社ではなく、クライアントの事業成長をお手伝いすることが私たちの会社の使命。まず課題の発見や共有が先で、ポスターやパンフレット制作は課題解決のための一つの手段。クリエイティブを用いたコンサルティングと言った方がわかりやすいかもしれません。

― 高橋さんは現在デザイナーという肩書ですが、元々はデザイナー志望ではなかったそうですね。

高橋 そうなんです。三田キャンパスの学生4人で、この会社を設立したのですが、2018年末の設立当初の事業の形態は今とは異なりました。迷いながら進むうちに、「事業成長のお手伝い」という方向に切り替わったのです。ただ、そうすると「商品の魅力を伝えるパッケージデザイン」、「三田市に人を呼び寄せるためのパンフレット制作」といった具体的なソリューションの必要が出てきました。「なら、オレがやるよ」って(笑)。デザインソフトの使い方からデザインの何たるかまで独学し、モノづくりをしながらデザイナーとしての腕を磨いていきました。

― 中岡さんは動画担当だそうですね。

中岡 私が入社したのは高橋たちが起業した1年後の、2019年でした。私の場合は高橋と少し違って、元々大学の映像制作団体で映画やPVを制作していました。

高橋 MOVEDOORが進化していく中で動画スタッフの人員増が必要になったんです。創業メンバーの一人が同じ映像制作団体の出身だったこともあって、中岡に白羽の矢が。一晩中ずっと話してたらしいよね(笑)。

中岡 はい。その情熱を聴き、自分も挑戦したくなって。ただ、元々は私にとって映像制作は「目的そのもの」。つくりたい作品をつくっていたのですが、クライアントとともに映像をつくる以上、「手段」である必要があります。クライアントの目標をかなえるために必要な動画、必要な手段を提供したい。ときには映像という枠すら超えて自分の関心が広がっていくことに、新鮮さを感じています。

プロジェクトの打ち合わせ中。互いの得意分野や意見をぶつけ合う。

― 課外活動と、ビジネスでの経験はそんなに違うものなのですか?

中岡 どちらにもいい面はありますし、課外活動のときもMOVEDOORでのビジネス活動でもつねに真剣ではあったのですが、唯一違うとすれば、「他者の存在」かもしれません。クライアントの要望に縛られるからと窮屈に思う人もいるかもしれませんが、同時に、クライアントの要望に応えようとすることで、それまで自分が持っていた以上の技術を身につけることができます。成長させてくれるんです。

高橋 私は起業したときからMOVEDOORの変化を見てきましたが、やはり変化のきっかけはつねにクライアントという「外部」からの刺激だと思います。今でこそMOVEDOORの手札は、動画やWEBサイト、パンフレットや名刺といったメディア制作から、空き家再生事業やオンラインサロンの設立運営などのプロジェクト活動まで。さらには、ロゴや商品企画、新規事業の立案といった企業ブランディング・戦略に関わる領域にも広がり続けています。でもこれらは全て、出会ったクライアント一人ひとりに真剣に向き合ってきた結果だと思っています。

― ビジネスという場だからこそ味わった「壁」はありましたか?

中岡 三田市のインバウンド施策に関わっていたときのことです。ある有名な洋菓子屋さんの店内を動画撮影していたのですが、意外に難しかったのがケーキの撮影。人物撮影はサークル活動でもたくさん経験していたのですが、こうした「物撮り(ぶつどり)」は初めて。光の加減や画角をはじめ、ちょっとした違いが「おいしそうかどうか」「できたてかどうか」はもちろん、「そのお店やパティシエさんが伝えたいこだわりポイントを視聴者に感じさせられるか」を大きく左右します。自分の技術の足りなさや視点の少なさに冷や汗をかきながらなんとか撮影を終えたものの、苦い思い出でしたね。お店を去るときにいただいたロールケーキは、「これでもっと練習してね」というクライアントのメッセージだと厳しく受け止めています。

高橋 失敗というわけではないけれど、私が普段気をつけているのは、クライアントへの提案が「ただのきれいなだけの作品」にならないようにということです。中岡が関わった三田市のインバウンド施策でいえば、動画をきれいに編集したり、おしゃれなパンフレットをつくるだけならそう難しくはない。でも、それだけなら私たちが関わる意味がないし、何より三田市というクライアント固有の課題です。そうして私たちが導き出したのが「田舎を味わい尽くす。」というコンセプト。大阪や神戸といった都市からも案外気軽にアクセスでき、なのに各所に豊かな田園風景や心地よい建築物があり、普段憧れている癒やし空間を体験できる。そんな三田の強みを生かせるように各所を撮影したり編集していったのです。クライアントの数だけ、私たちの視点も広がっていきます。

― 地域や社会とのつながりが、お二人も、組織も進化させてくれたのですね。ところでこの新オフィスもそんな地域とのご縁だとか。

高橋 はい。仕事を通じてお世話になった方につなげていただきました。

中岡 三田駅からまっすぐ続く商店街沿いで徒歩3分。かなりいい立地です。

高橋 10年ほど空き家だった古民家ですが、管理者さんは「地域活性化につなげてくれる若者に」という願いを持って、利用者を探し続けていらっしゃったそうです。まさか自分たちを選んでいただけるとは…日々の仕事の積み重ねって大事なんですね。

中岡 譲り受けた古民家を去年の11月くらいからリノベーションして、みんなで新オフィスを立ち上げました。リノベーションをお手伝いいただいたのも、仕事で知り合った建築業者の方です。

古民家のオフィスの玄関前で仲間たちと。

― 着実に地域に根づき、進化していくMOVEDOORですが、そうした柔軟さの秘訣は何でしょうか?

高橋 いろいろな個性が共存していることかな。多様性があるから、どんな外部からの刺激があっても、それに応えることができる気がします。

中岡 そう。外からの刺激に対する化学反応だけでなく、内部の仲間同士の化学反応もある。やっぱり、他者との刺激があることが、自分も組織も柔軟にしてくれると思います。

高橋 MOVEDOORのメンバーは現在、全6人ですが、全員得意分野も志向性も違います。私はデザイン方面に関心があったけれど、中岡は動画。一方、代表は人とのコミュニケーションが得意で、ほかにもマーケティングに興味がある者もいます。ちなみに、私も含めた起業時のメンバーは割と大らか・積極タイプ。細かいことはあまり気にせず前進のアクセルを踏み続けてきました。でも後から入社した中岡は逆に守りに必要なことに気がつくタイプ。アクセルを踏みすぎると見落としてしまいがちなリスクや、事前の管理などを私たちの中に取り入れてくれました。それでMOVEDOORはバランスが取れたというか、さらに多様性のある集団になれたと思います。

― 次々と起きていく化学反応が面白いですね。

高橋 MOVEDOORに限らず、関学の学生は、とにかくそれぞれが、「何かやろう」としています。中の人間たちは自然にやっているのですが、外から入ってくると、のびのびとした挑戦気質に驚かされます。周りに同調を求めたり強制するものではなく、「自分はここに興味があるから、これをやってみる」といった感じ。でもだからこそ自然に影響を受けて、「自分の好きなことは何だろう?」と考えてしまう。そして、行動に移してみたくなるんです。

中岡 なるほど。言われてみればとても納得です。個性が多様だし、自分の個性を大事にしているから、ぶつかり合うこともあります。でも、そういうことが多いからこそ逆に、互いの違いを認め合い受け入れる習慣が身についているような気がします。だからこそ、のびのびと自分の関心事に挑戦できるというか…。

  • 振り向けばすぐに相談できる。互いの距離感が心地よい。

  • 古民家をリノベーションした、雰囲気のあるオフィス。

高橋 途中で「やっぱりこっち」と、挑戦の方向を変えたり、新たに増やすこともよく見かけるよね。
中岡 大学もそれを応援してくれているように思います。私が代表を務めていた映像制作団体も、そうした大学の支援制度「アカデミックコモンズ・プロジェクト」として活動しています。
高橋 私自身、最初はボランティアに興味を持っていました。海外建築ボランティアプログラムにも参加しましたし、インターン生を1年間務めたことも。そして4年生となった今は、専門である数学の研究をしながら、教職課程も受講。そして地域の方々と事業成長に挑むという、とてもたくさんのベクトルの活動に挑戦できています。

―仲間や社会とつながりながら、変化していくお二人の、今後の夢は何ですか?

中岡 私は高校生時代にロボット制作に挑戦し、その経験から、諦めないしぶとさこそが夢をかなえる条件だと学びました。卒業後は映像クリエイターと、エンジニアとしてモノづくりに携わること、2つの目標の間で悩んでいます。一見、全く違う分野だと思われる業種だと思いますし、私もそのように思います。ただ、自分の手でつくったモノを社会に届けることに変わりはありません。私の夢は、広い意味で「モノづくり」に携わり続けることなのだと思います。
高橋 私は卒業後、MOVEDOORに残るつもりですが、でも教員になるという夢も持ち続けます。このMOVEDOORで、たくさんの地域の方とつながり、高い壁を乗り越えていった経験を、いつか自分の生徒たちに伝えてあげたいですね。関学での出会いや事業を通じて私が受け取った気づきを、次代を担う子どもたちに受け継いでいきます。