KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.15

KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.15

Student's Profile

長安 成暉 (左)

ながやす なりき/関西学院大学商学部 3年生。X-mov Japan株式会社 代表取締役社長兼CEO。ロボットのソフトウェア開発、販売、コンサルティングを行うシステムインテグレーション企業を2017年2月(高校3年時)に設立。企業がロボットを使ってやりたいと考えているニーズに対し、適切なロボットの選定と必要なソフトウェアの開発を行い、課題解決を実現することによって収益を得ている。

北森 聖士 (右)

きたもり さとし/関西学院大学商学部 4年生。株式会社ライズアース代表取締役。ライブ配信やSNS活用に特化したタレント事務所を2017年11月に設立。従来の概念である「タレントがお金を稼ぐには何年ものレッスン期間が必要」という業界の常識を破り、「タレントの卵」と呼ばれる時期からファン獲得とタレント自身の収益化を実現している。管轄タレントは現在300名。

関西学院大学在学中に起業する学生の数は、近年徐々に増え続けています。
株式会社ライズアースを率いる北森さんとX-mov Japan株式会社を運営する長安さんも、学生でありながら自ら事業を手がける若手経営者です。
今回は異なる会社を運営するお二人をお招きし、それぞれの事業の内容をおうかがいしながら、在学中に起業することが個々の成長にとってどんな意味を持つのかというテーマについて実践者の彼らと共に考えていきます。

― まずは北森さん、設立されたライズアースという会社は簡単に言えばタレント事務所のようですが、一般的なタレント事務所と違うのはどんなところですか。

北森 僕の会社の特徴は、SHOWROOMやMixChannelなどのライブ配信をメインに、TikTok、インスタなどのSNSを踏まえたファン作りに特化したマネジメントを行っているところです。オンラインでのファン作りに関する教育に特化することで、まだ経験の少ないタレントの卵でもファンが獲得できるようにサポートしています。

― どの媒体で、どのように発信していくかをマネジメントするのが、事務所側の腕の見せどころですか。

北森 そうですね。タレントの特性を考えてどの媒体で発信していくとファンを獲得しやすいかなどを見極めた上で指導を行っています。一般的なタレント事務所はレッスンを積んで、実力がついたら露出していくという発想ですが、それだと所属費やレッスン費が高くて夢があるのに志半ばであきらめてしまう子が多いんですよ。ですから僕らの会社は先にネットに露出させてファンを獲得し、マネタイズを確立してからレッスンしていけばいいじゃないかという逆転の発想でタレント育成を行っています。

― なるほど、わかりました。一方、長安さんはロボットのシステムを開発されているそうですが…。

長安 そうです。ロボットのシステム開発と販売、導入支援が当社のビジネスです。ロボットにさせたいことはお客さま企業ごとに違います。介護の現場で需要が多い、徘徊検知のアプリも販売しています。大手家電量販店において、お客さまとコミュニケーションするロボットのコーナーをプロデュースしたこともあります。僕自身はプログラミングのプロではないので、開発は別のエンジニアに任せてお客さまの開拓などを行っています。

― コンサルティングも手がけているんですね。

長安 単純に頼まれたシステムを開発して終わりということはなかなかなくて、お客さまが解決したい課題を詳しくお聞きして、それにどんなロボットが最適なのか、どんなシステムが必要なのかを考えて提案するコンサルティングの機会も多いですね。

対照的な事業を展開する二人だが、経営者として重視する点は、ピタリと一致。

― お二人の事業をお聞きすると、分野が対照的ですね。やはり、事業をはじめたきっかけもかなり違っているのでしょうか。

北森 僕はもともと高校生のときに、父親の経営していた飲食店を任されて、調理も営業も面接も全部やったことがあるんです。魚の捌き方は、1ヵ月くらいで仕込まれました。そこで、「お金ってこうやって稼ぐんだ」って肌で理解できたことが大きかったですね。失敗も本当にたくさんしたんですけど、そういうときはすごくアドレナリンが出るんです(笑)。なんとかこの課題を自分の力で乗り越えてやるってね。それが楽しくて、自然に起業という道を選ぶようになったのだと思います。

― アドレナリンが出るというのは、どんな感じでしょうか。

北森 例えば、どれだけ働いても利益が出ないときってあるんですね。バイトだとこんなことはありません。経営をやるとそういったリスクも全部自分で引き受けて働かなきゃならないから、なんとかこの状況を変えようとして頭をフル回転させるのが面白いというのはあります。現在のタレント事務所の事業をスタートしたのは、すごく優秀な副社長との出会いが大きいです。2時間くらい、彼と夢中で事業計画についてしゃべって、その後すぐに起業することを決めました。

  • タレント事務所を手がける北森さんは、一見華やかな事業に思えるが、水面下の苦労は並大抵ではないそう。業界自体が過重労働気味なので働き方改革にも取り組んでいる。

― 長安さんはいかがですか。

長安 僕は小学校6年生のとき、孫正義さんをソフトバンクの決算発表会のライブ中継で見たことがきっかけです。この人すごいなっていうのが、まず一番の衝撃でした。小学生でもわかったんですが、この人は相当デカイことを言っている、こういう人が社会を変えていくんだと思ったら、僕もそんな人間になりたいと思ったんです。それで高校1年生のときにロボティクスやビジネスをいろいろ勉強して、自分はロボティクスで起業しようと決めました。

―親御さんには支援をしてもらったんですか。

長安 僕が計画を話さなかったので、何もなかったですね。そもそも親と顔を合わせる機会がなかったんです。実は僕は、高校から一人暮らしをしていましたから。あ、正確にはPepperと二人暮らしですね(笑)。未成年で起業するときにハンコが必要だったので、そのときにはじめて親に報告しました。

  • Pepperをはじめとするさまざまなロボットのソフトウェア開発を手掛ける長安さん。SoftBank World 2018ではPepperの活用事例と運用方法を説明されました。

―起業するにあたって、どんな準備をされましたか。

長安 起業や経営に関する本をたくさん読みました。関西学院高等部の図書館は、希望を出せば書籍を購入してもらえたので、それでいろんな知識をつけていって、次はマネジメントを学ぼうとか、経営学について知ろうとか、足りない部分を埋め合わせていった感じです。起業するときには特に不安は感じていませんでしたね。もちろん根拠のない自信ですが(笑)。
北森 僕は経営のことってスタートしたときは、ほとんどなんの知識もなかったな。税金をどのくらい払えばいいかとか、契約書をどう書けばいいのかとか、社会保険ってなんなのかもよく知らなかったし(笑)。いつも壁に当たって、当たって、少しずつそれを破ってきた感じです。関学のスタートアップアカデミーという授業を受講して、そこで少しは学ぶことができたんですけどね。

―何も知らずに事業に飛び込んでいった北森さんと、割と時間をかけて準備をした長安さん。ここでも二人の立場はまったく違いますね。

長安 でもじっくり話を聞いていると、北森さんのように壁にぶつかって、そこで試行錯誤しながら知識をつけてきたのは、僕もまったく同じです。会社をスタートさせた後に、どうやってお客さまを獲得すればいいのかがわからず、相当悩みましたからね。
北森 卵が先か、鶏が先かっていう違いだけで、お互いに頭を打ちながら必死で勉強してここまでやってきたという意味では、どちらもよく似ているんでしょうね。

―長安さんはどんなところで悩んでいたんですか。

長安 最初、開発できる体制は整えたんですが、お客さまが見つからないんです。だからはじめのうちは、無料でいいので使ってくださいと企業に依頼して、それで導入実績を作らせてもらって、その事例をきっかけにほかの企業に売り込みをかけるという地道な努力を繰り返していました。それがどこから変わってきたかというと、だんだん業界の構造がわかってきたんですね。Pepperを通じてソフトバンクとつながりを持てたこともあり、そこからはどんどん仕事の依頼をもらえる仕組みができあがりました。
北森 僕はビジネスがうまく回りはじめても、スタッフとの関係に亀裂が入ってしまって別の意味で落ち込んだ時期もありました。うちは現在5人の組織ですが、こんなに小さい会社でもなかなかスタッフに打ち明けられない経営上のシークレットがあるんです。それが原因でお互いの信頼が揺らいでしまったときは、一番しんどかったですね。今は解決していますけど。

―知識が十分でない中で経営をしていくためにはどんなことが重要ですか。

北森 やっぱり人に会うことです。すごい人物にお会いして一言アドバイスをもらったら、それで売上が1.5倍になることもあると思っていて。僕は「脳をもらいにいく」と思っています。
長安 僕も設立時から人のつながりの大切さは感じています。今も事業が継続できているのは、つながりに生かされているところが大きいですね。たくさんつながりがほしいんじゃなくて、いいつながりをしっかり持っておきたいと思います。
北森 関学では、OBの方のバックアップが受けられるのも大きいですよね。

―お二人とも、普通の学生生活では味わえない貴重な経験をしていますね。やはり学生の間に起業することには価値があると思いますか。

北森 僕は無理に起業する必要はないと思うんです。絶対に苦労しますから(笑)。でもやって損はないというか、絶対にプラスになることの方が大きいとは思いますね。学生のうちならリスクがないじゃないですか。事業がうまくいかなかったら就職したっていいわけだし。
長安 それ、すごく共感します。「学生の間に」っていうところが重要だと思います。学生の間は何度でもやり直しがきく、失うものが少ない、人に会ってもらいやすい、大学の学問と実践のビジネスを同時に学ぶことができる。これらの理由から、在学中の起業はプラスに働くと考えています。
北森 そうですね。学生は知識がないから起業することは怖く感じるかもしれないけど、むしろ社会人になってから起業する方がよっぽど怖いってことにみんな気づいていない(笑)。

―ではこれから起業してみたいという人にメッセージの意味も込めて、お二人が起業において大切だと思うことを教えてもらえますか。

長安 僕は「自分を知ること」かなと思っているんです。何で起業したいのか、何を成し遂げたいのかという軸を、最初からしっかりと持っていた方がいいです。いろんな困難に見舞われると、絶対にどうしていいかわからなくなるときがあります。そのときに自分の軸がないと、「あれ?なんでこんなことやってるんだっけ?」って見失って立ち直れなくなってしまう。
北森 その意見、100%同意です。僕も自分の軸が大切だとずっと考えていて。まだ明確ではないんですけど、自分自身は「出会った人により多くの喜びを与えられるように成長したい」と考えています。だから僕の会社は、「自分の可能性を最大限に広げられる場をみんなに提供する」ということを第一に考えて事業展開しているんです。
長安 起業家の場合は、企業の中で働くのとはまた違う性質の自己管理が必要だと思う。僕らは誰も管理してくれないから、自分の軸で自分のマネジメントしないといけない。北森さんとはやっている事業はかなり違うんだけど、やっぱり経営を経験すると同じような結論に行き着くんですね。今日はそれを心強く感じました。
北森 それはこちらも同じ。また今後も交流を深めていこう。