KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.14 厳しさが築き上げた太い絆。お互いが、最強の応援団。

KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.14 厳しさが築き上げた太い絆。お互いが、最強の応援団。

Student's Profile

岸本 ゆずか (左)

きしもと ゆずか/関西学院大学理工学部環境・応用化学科 4年生。関西学院大学の歴史上初となる応援団総部の女性団長を務める。これまでの伝統を見直し、新しいルールづくりに尽力。

柏原 加奈 (右)

かしはら かな/関西学院大学経済学部 4年生。高校時代に演劇で鍛えた声量を生かして頭角を現し、応援団総部の副団長と指導部の部長を務める。岸本団長が最も信頼するパートナー。

大観衆に怯むことなく、高らかに口上を言い立て、キレのある演舞で見る人を鼓舞する学ランの応援団。その団長と副団長が、女性であることに驚く人も多いでしょう。関西学院大学の応援団総部の歴史の中で初の女性団長となった岸本ゆずかさん、副団長として、そして指導部長として彼女を支える柏原加奈さんのお二人に今回はインタビュー。「男の部活」という印象が今なお強い応援団に入部したきっかけや、上下関係の厳しい部での苦労、幹部としての団への想いなどをお聞きしました。

― そもそも応援団総部というのはどのような組織なのかご存知ない方のために、まずはそこから教えてもらえますか。

岸本 はい。本学の応援団総部は、指導部、吹奏楽部、チアリーダー部の3部で構成されていて、私たち指導部はその全体をリードする立場となります。私が応援団総部の代表である団長を務めており、柏原が指導部の代表である部長を務めています。
柏原 アメリカンフットボール部や硬式野球部をはじめとする体育会各部の公式試合などに駆けつけ、指導部が先導する形で、総部全体で力を合わせて応援を行っています。試合観戦に訪れたことがある方なら、私たちの姿を見かけたことがあるのではないでしょうか。

硬式野球部の関関戦を応援。

硬式野球部の関関戦を応援。甲子園球場という大きい舞台で精一杯リーダーを振る。

― 現在、指導部の部員は19名で、今年は人数がかなり増えたと聞いていますが、女性2人が幹部として頑張っていることが影響していると思いますか。

岸本 それもあるかもしれませんね。学ランを着て大声を張り上げているので、どうしても怖い印象を持たれやすい部ですが、私たちがいるおかげで多少は緩和されているのかも(笑)。
柏原 実は私たち自身も、入部の際は女性の先輩の存在にだいぶ影響されましたからね。

― お二人はどういうきっかけで応援団総部指導部に入ろうと思ったのですか。

岸本 私は高校3年生のときに、関学のオープンキャンパスに参加して、そこで指導部の先輩方の演舞を見たんです。8月の最高に暑い時期でしたが学ランを着て全力でパフォーマンスをされていて…、その姿がもう、ものすごくかっこいいなと思いました。中には女性の先輩もいらっしゃって。それまで応援団というのは、男性のものと思い込んでいましたが、そのときに私にもできるのかなと思いはじめたんです。

入部は頭で考えたわけじゃなく、心で決めた。何があっても、挫けないと自分に誓って。
一緒に活動している吹奏楽部、チアリーダー部とオープンキャンパスでの演舞後に。

一緒に活動している吹奏楽部、チアリーダー部とオープンキャンパスでの演舞後に。

― 高校時代はバレーボールをされていたそうですが、大学でもバレーボールをしようとは考えませんでしたか。

岸本 本当はオープンキャンパス後も、応援団は気になるけど難しそうだから、最終的にはバレーボール部かなと思っていたんです。それが入学式でもう一度、応援団の演舞を見たときに、本当に大げさじゃなく震えるくらい感動してしまって。それで入部を決めました。

― 柏原さんはどうですか。

柏原 私は大学では何かにとことん打ち込んで思い切り青春を感じたいと思っていたところ、入学式で応援団の演舞を見て圧倒されまして。もう一目惚れみたいな感じで、会場から出るとその足で学ランを着ている人をつかまえて、「私、入部します」と言ったんです(笑)。

― そんなに衝撃を受けたのは、なぜですか。

柏原 私は広島県の出身で、入学式の日はこれから友だちできるかなとか、いろいろすごく不安でしたが、応援団の方の新入生応援パフォーマンスを見て、心の底からすごく勇気がわいてきて「頑張っていけそう!」って思えたんです。それで私も人を応援するこの部で活躍したいなと思いました。声が大きいことは私の一番の長所でしたし(笑)。

― なるほど、お二人とも応援団に運命的なものを感じて入部されたのですね。でも想像するからに生易しい部ではないと思いますが、その後の活動はいかがでしたか。

岸本 上下関係に厳しい部ですから、1年生のときは特に、しんどい思いしかしてないですね。フリや手拍子の形はもちろんですが、独特のルールに言葉遣い、立ち方や待機の姿勢などとにかく覚えることがたくさんあって。間違えると当然怒られてしまうので、バレーボール部のキツイ練習に耐えてきた私も、想像以上の厳しい環境に思わず泣いてしまうこともありました。
柏原 体力的にも厳しい部活です。特に夏休みの合宿はなかなかですよ。暑い最中に10kmほどランニングをして、走り終わった後もさらにダッシュ、筋トレと続くんです。私たちが女性だからといって別メニューはありません。逞しい男性の先輩方と同じ練習をこなしていました。
岸本 ヘトヘトに疲れたあとの食事がまたツライ(笑)。1年生は、幹部の方のコップが空いてないかを常に気にして機敏に動きながらも、量の多い食事を幹部より早く食べ終わらなくてはいけない。食事中の会話はもちろん禁止。

― 聞けば聞くほど、お二人はすごい経験をしてこられたなと思いますが、それでも辞めようとは思わなかったんですか。

岸本 いや、一回だけ柏原が辞める騒動があって。
柏原 最初はどんなにツライことも耐えようと思っていたんですが、そのうちに、いくらなんでもコレはおかしいぞと思いはじめて、続ける意欲がなくなってしまったんです。それでもう辞めてやる!と、練習をサボったことがありました。すると次の日、先輩に呼び出されまして。

― ちょっと怖いシチュエーションですが、どうなりましたか。

柏原 私もてっきり怒られると思って行ったんですが、練習場に入ってみると、待ち構えていた先輩たちが整列して、入学式のときのようなエールを私に送ってくださって。「柏原帰ってこい、オー!」みたいな感じです(笑)。普段はあんなに厳しいくせに、一体なんなんだ、この団体は?と一瞬ワケがわからなくなりましたが、先輩方のその声援に胸を打たれて、もう一度頑張ろうと思うことができたんです。
岸本 私は三田キャンパスにいて、その場に立ち会っていないんですが、柏原から電話がかかってきて、「やっぱり辞めたくない!」と。じゃあもう一回頑張ろうかと話しました。

受け継がれる伝統を変えることは怖い。でも、自分たちが本気でこの部の未来を考えなければ。
オープンキャンパスでは、未来の関学生へエールを送っている。

オープンキャンパスでは、未来の関学生へエールを送っている。

― 厳しい部活だからこそ経験できた、熱い日々ですね。でもお二人を見守ってきたご両親はさぞかし心配されたでしょう。

岸本 私は最初からずっと親に反対されていました。父親はやりたいことをしたらいいと言ってくれたんですが、母親が「女の子なのに、そんなこと!」と猛反対。それを押し切って入部したものだから、泣きながら家に帰った日も「じゃあ、辞めたら?」と冷たかったです。でも1年が経った頃でしょうか。母親が「今までいろいろ言ったけど、ゆずが頑張ってる姿を見たら、これからは応援しようと思った」と言ってくれて。「こんなこと言うのは恥ずかしいけど、今はどんなときも決してへこたれないあなたを、誇りに思ってる」とまで言ってくれたんです。そのときからは私が試合結果を報告するより早く、母親の方から「今日勝ったね〜。おめでとう」とLINEが来るようになりました。
柏原 私の親もすごく反対していて、今もそうなんですけど。でもたまに私に黙って試合会場に見に来ているみたいなんですよ。あとで「なんで手を振ってくれないのよ!」って言われたりします。そんなことこっちは知らないんですが、少しは気にして応援してくれているのかな。

― ご家族の心中を察すると、応援したいというのも、辞めさせたいというのも、どちらも本音という気がしますね。ところでお二人は現在4年生になり、その厳格な部のトップを務めているわけですが、やはり後輩には厳しい指導を行っているのですか。

岸本 基本的に指導部の規律の厳しさは、今も変わらないと思います。ただ、私が団長になってからは、この部の厳しいルールをかなり見直してきました。

― それはどういうことですか。

岸本 私自身、1年生の頃から団のルールが身体に染み付いていたため、特に疑問を持ったことはありませんでした。しかし3年生になり団の運営側の役職を経験する中で、与えられた仕事をただ「伝統だから」とそのまま踏襲するのではなく、意味や必要性を考えた上で引き継ぐか改善するか判断するべきだと思うようになりました。そして、「それって応援団でも同じことが言えるんじゃないか」と気付いたんです。団のルールも一つひとつ見直すことで、大切な伝統はその意味も含めて受け継ぎ、改善するべきルールは時代に合わせて変えていくことで、応援団総部をもっといい組織にしたい!と思い団長に立候補しました。

長田鉄人広場前で開催している「そんなあなたを応援します」にて、市民の方向けにエールを送る。

長田鉄人広場前で開催している「そんなあなたを応援します」にて、市民の方向けにエールを送る。

― 受け継がれてきた伝統を変えるのは大変なことだと思いますが、どのように進めたのですか。

岸本 最初はまず応援団総部の全員と面談をしましたね。どんなことに不満や疑問を感じているか直接聞いてみたんです。そうしたら、飲み会のときに1年生が一発芸をして場を盛り上げる決まりがイヤだとか、いろんな意見が出てきました。これを受けて検討し、廃止すべきだと思った伝統は勇気を持って変えていきました。もちろん、意味を考え直したことで、大切にしなければならないと気づいたこともあるんですよ。例えば団道具の取り扱いに関しても厳しいルールがあるのですが、団道具は私たちの活動のシンボルですし、相手チームに敬意を表すための道具という意味もあるから、これはやはり厳格に取り扱うべきものだなと再認識しました。そうやって一つひとつの決まりの意味を考え、自分の中に落とし込んでいったんです。最終的にはそれが、みんなが信頼できる応援団総部につながっていくと信じて。

― 大きな改革をされましたね。その大変な道のりを岸本さんと柏原さんは支え合って歩んでこられたのですか。

岸本 はい。私たち二人はタイプがまったく真逆で、柏原が私の足りない部分をうまくフォローしてくれています。私は理屈で考えて、団の改革などをどんどん推し進めていくことができる反面、細かい部分の調整や連絡などを面倒臭がって放置してしまうところがあるのですが、よく気のつく柏原がそういう部分を助けてくれ、なんとか二人で部を支えてきたという印象です。活動の中で課題に気づいたときは、すぐに連絡をとって二人で話し合うようにしていますね。
柏原 私は岸本みたいに論理的に考えることが苦手なので、つい間違ったことを発言してしまうこともあるんです。でもそういうときに岸本が「そこは違うんじゃないか」とハッキリ言ってくれるので、指導部長としての役割を果たせているのは彼女のおかげだと思っています。あとは普段の生活でも、いろいろアドバイスしてくれますね。「もっと勉強しろ」とか(笑)。

― お二人はもう、友だちを超えた関係のようですね。

柏原 岸本のことは、「親友」と呼ぶのもこそばゆく、なにか違う気がします。あえて言えば、「家族」という感覚の方がしっくりきますね。どんな辛いことがあっても辞めずに頑張れたのは、岸本がいてくれたから。大変なこと、楽しいことを、今まで二人で経験してこられたことが、私の大学生活の一番の財産だと思っています。
岸本 私も柏原に出会えて本当によかった。おかげで今まで二人で助け合って、悔いのない活動をしてこられたと思っています。ルールを変えることも本当は怖かった。でも周囲にも支えられながら挑戦を続けたことで、それまでの私にはなかった自信を得ることができました。これからもこの部が、私たち以外のほかのみんなにとっても、最高の学生生活のきっかけになればと思っています。

 
 
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