KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.13 この胸に情熱さえあれば前例がなくても道は拓ける。

KWANSEI SCHOOL LIFE Vol.13 この胸に情熱さえあれば前例がなくても道は拓ける。

Student's Profile

千里国際 高等部 2年生鳥枝 樹里亜

とりえだじゅりあ/関西学院千里国際高等部2年生。中等部2年生のとき、関西学院大学主催の「KGビジネスプランコンテスト」の中学校部門で優勝。翌年、総務省が主催する「平成27年度起業家甲子園」で準優勝にあたる審査委員特別賞を受賞(中学生の出場は初めて)。その後わずか15歳で自分の会社「株式会社JuliaT」を設立し、社長として事業の運営を続ける。

普段はみんなと同じように授業を受け、放課後は水泳部でバタフライの練習に一生懸命、そして家に帰れば宿題に頭を悩ませる普通の高校2年生。でも、そんな彼女のもう一つの顔は、ファッション提案サービスを提供するベンチャー企業の社長。中学生のとき15歳で実業界にデビューし、ほかの高校生とはちょっと違う経験を積んできた鳥枝樹里亜さんを今回はインタビュー。誰も歩んだことのない道を進み続け、どんなことを見つけてきたのか尋ねてみました。

― 鳥枝さんはなんと15歳で会社を立ち上げたそうですが、まず運営している会社について詳しく教えてもらえますか。

 私が代表取締役社長を務める株式会社JuliaTは、中高年の男性向けに個別にファッションコーディネートを提案するサイト「The STYLES」を運営し、収益を上げているサービス会社です。具体的なサービスの内容は、まずお客様が手持ちのワードローブの写真を自分のスマホなどで撮って「The STYLES」のマイアカウントに登録してくだされば、バーチャルクローゼットとして自分の服をどこでも閲覧できるようになり、新しい服を購入される際に組み合わせをしっかり検討して選べたり、間違って似たような服を買う失敗をせずに済むというのが基本のサービスです。そして次が大切なんですが、お客様が「娘の学校のイベントに少し着崩していきたいけど、どんな格好がいいかな?」というふうにコーディネートに悩まれたとき、サイトからリクエストをくだされば、当社に登録しているスタイリストがお客様のワードローブの情報を確認したうえで「このジャケットとこのパンツを組み合わせると堅くなりすぎず、適度にリラックス感が出ていいですよ」と具体的なコーディネートのアドバイスを行います。「The STYLES」はおしゃれに無頓着な男性が、ちょっと見た目を気にするときに頼れるアドバイザーとしてのサービスなんです。登録は無料、バーチャルクローゼット作成とライブラリ閲覧についてはお金は一切かかりません。具体的なファッションアドバイスの際にチケット制で料金をお支払いいただく仕組みになっています。

中学生で起業。世の中では例のないことだけど、自分の中ではごく自然なチャレンジだった。
梅田のヒルトンプラザウエストにあるオフィスでの仕事風景。

梅田のヒルトンプラザウエストにあるオフィスでの仕事風景。

― いま現在、約1200名の利用者がいらっしゃるそうですが、その方々からの評判はどうですか。またどういうところが評価されていると思いますか。

 ファッションアドバイスが役に立ったと喜んでくださっている声をよくお聞きしています。私自身やこの事業に対しての応援メッセージもときどきいただいていますね。評価いただくポイントはやはり、自分の手持ちのワードローブの中から組み合わせを提案してもらえるというのが実用的で役立つからじゃないでしょうか。ただし、お持ちの服だけの組み合わせでは、お客様の気持ちが盛り上がりにくいかもしれないので、「もしこんなチーフをお持ちでしたら、挿していただくとより素敵ですよ」とプラスアルファの提案も積 極的に行うようにしています。またこのサービスのもう一つのポイントは、アドバイスのシチュエーションを具体的に絞ったことだと思います。ターゲットはおしゃれが苦手な人たちですから、そもそもスタイリストに意見を求めるということ自体が難しいだろうと考え、パーティや旅行など、具体的なシーンを選択肢から選んで質問できるシステムにしました。これが利用しやすさにつながっているのではないかと考えています。

― たしかに男性は女性に比べ、ファッションに苦手意識を持つ人が多いので、これは実用的でうれしいサービスだと思いますが、どういうきっかけで思いついたんですか。

 きっかけは自分の父親なんです。忘れもしない小学生のときの父親参観日に父親がパジャマみたいな服装で学校に来ようとしたことがあって(笑)。なんとか服を変えてほしいと必死で説得したのですが、なかなか納得してくれませんでした。そのとき、ファッションセンスのない父は、人の意見を聞いた方がいいに決まっているのに、どうして娘のアドバイスは素直に聞けないんだろうと気になりました。私が小学生だったから? いや、私自身も身近な人からのアドバイスは素直に聞けないことがあるから、ひょっとしたらデリケートなファッションアドバイスは少し離れた立場からの方がいいのかもしれない。この思いつきは将来どこかでなにかのビジネスに生かせるかも、と漠然と思っていたんです。私は小学校4年生の頃に税理士事務所でインターンシップを経験したことがきっかけで世の中を経済という数字の視点から見る面白さに気付き、経営にも興味を持っていて、自分で何かをゼロからはじめてみたいという憧れを抱いていました。

― それで中学校2年生のときに関西学院大学主催の「KGビジネスプランコンテスト」の中学校部門に出場し、いまの事業であるコーディネート提案サービスを提案して優勝されたというわけですね。

 そうです。いくつかアイデアはあったのですが、これが一番現実的だし、多くの人に興味を持ってもらえるプランじゃないかと思ったので、このビジネスの計画を練り上げることにしました。私、こういってしまうとなんですが、良いプランさえあれば、プレゼンテーションには自信があったんです(笑)。私が通う千里国際高等部では早くからプレゼンテーションをする機会がたくさん設けられていたうえ、生徒会長を経験したこともあって自然に人前で話すことに慣れていましたし、自分が熱心に話すことで聞き手に影響を及ぼしていくコミュニケーションがとても楽しいと感じていました。出場を決めてからは、さらに説得力に磨きをかけるため、プレゼンテーション番組のTEDを見て話の強弱のつけ方や立ち振る舞い方などを徹底的に勉強。準備万端の状態で登壇したところ、私のパッションが審査員の方に高く評価していただけ、優勝することができました。また講評では、評価いただけた点の一つとして、計画の具体性も挙がっていました。数字の好きな私はこのプランに損益計算書をつけ、何年で黒字化するかという事業計画まで提示したため、審査員の方はその点においても私のアイデアの実現可能性を高く見積もってくださったようです(実はその後に、それほど甘いものでないことを知ることになりましたが…)。ともかくこの優勝がきっかけとなって総務省主催のビジネスプランコンテスト「起業家甲子園」にも出場させていただき、中学生なのに準優勝にあたる審査委員特別賞を受賞することができたので、「これは本当にビジネスとして実現できるかもしれない」と思うように。それが14歳のときで、実際の起業は登記が可能になる15歳の誕生日を待って行いました。

  • 大学生が中心となるビジネスプランコンテスト「起業家甲子園」

    大学生が中心となるビジネスプランコンテスト「起業家甲子園」でも審査委員特別賞という好成績を収め、起業への弾みがついた。

  • 「KGビジネスプランコンテスト」の中学生部門

    「KGビジネスプランコンテスト」の中学生部門に練りに練ったアイデアを持ち込んだところから、今回の挑戦がはじまった。

― 中学生で起業するというのはかなり特別なことですから、さすがにどうなるんだろうと不安も大きかったんじゃないですか。

 不安もありましたが、それ以上にワクワクする気持ちの方がずっと大きかったです。自分に何ができるかわからなかったけど、自分から進んでいけば確実に何らかの結果がついてくる。それを体験していくことは本当に楽しいことでした。例えば、サービス立ち上げの段階で、私はスタイリストとの契約を結ばなければならなかったのですが、プロに依頼するとコストが高くなってビジネスが成り立たなくなるため、アマチュアのスタイリストを探していました。それで近隣の服飾専門学校に一人で訪問し、学長にお会いしに行ったんです。私にはこんなビジネスのアイデアがありますが、そちらの学生さんにご協力願えませんかって。普通ならこんな突然の売り込みは断られて当然でしょうが、中学生が一人でやって来たものだからさすがに学長も驚いて特別に会ってくださったんですね(笑)。しかもじっくりお話をすると、専門学校の学生たちは勉強したことを実践する機会が少ないから、そのサービスに協力することは学生のメリットにもなると理解していただくことができ、連携してサービスを立ち上げることに成功しました。「The STYLES」のファッション提案は、若手スタイリストたちの協力のおかげで成り立っています。これは私がビジネスを立ち上げ、運営していく中で行ってきた商談の一つの例ですが、そのような経験を何度もするうちに私は、ビジネスというのは一見困難そうに見えても、自分が情熱を持ってぶつかっていけば、意外と扉が開かれていくものなんだ、結構シンプルなものなんだなと知ることができました。ちなみに私の親も「どうしてもやりたい」というと反対せず見守ってくれました。世の中には最初からムリと決めつけて挑戦を躊躇してしまう人がたくさんいますが、本当にもったいないと思います。

失敗より、後ろ向きになることを恐れた方がいい。いつも前を向いていられれば、結果はついてくる。
鳥枝さんが提供するWebサービス「The STYLES」

鳥枝さんが提供するWebサービス「The STYLES」に登録するとスタイリストからのファッションアドバイスが受けられる。

― 失敗してもいいから、どんどん挑戦していくべきだということですね。

 そうです。うまくいかなかったら、そこでどうしようかと考えて、次の手を試してみる。その繰り返しでビジネスは動いていくんだなとわかりました。最初から失敗のない完全な計画を立ち上げる必要はないし、そんなことは現実的にできないんじゃないかと思います。私自身も実際に動きながら、システムをより使いやすいものに改良したり、より登録者の方が増えるように広告の出し方を検討したりしています。失敗といえば以前こんなことがありました。京阪神学生ビジネスプラングランプリという大学生向けの催しにゲストとして呼んでいただいたのですが、壇上で講演をしているときに、原稿が思い出せなくなったことがあるんです。プレゼンテーションのときは話す内容を完璧に頭に入れていくのですが、ちょっと油断してしまったのかもしれません。話題の人として招かれているのにどうしよう…と焦ったんですが、気持ちを切り替え、「中学生なので許してください!」と謝って舞台袖に原稿を見に行くと、審査員の方たちが「許す!許す!」と言って場をなごませてくださって(笑)。大人ってやさしいな、と思いました。こういう経験からも、失敗はそんなに怖いことじゃないと知りました。ただ、落ち込んだりして後ろ向きになるのは良くないですね。自分がいつも前向きな姿勢でいることはとても大切。私の場合も自分が情熱を絶やさずにいるから、周りの人たちから協力が得られるのだと感じています。私はいつも自分に「攻撃は最大の防御」と言い聞かせています(笑)。

― 中高で貴重な経験を積んできた鳥枝さんが今後どんなふうに進んでいくのかとても興味がありますが、今後のことはどう考えていますか。

 まだはっきりとはわかりませんが、私はビジネスや数字に強い関心があるので、高校卒業後は会計学を学び、米国公認会計士の資格取得に挑戦してみたいという想いがあります。「いまの事業をどうするの?」と聞かれることも多いですが、基本的に欲張りな性格なので、一つの事業を成長させていくだけじゃなく、もっといろんなビジネスに関わり、今は想像もつかないようなことを知り、いろんな人生を生きたいと思っています。