映画の世界を、音楽で彩りたい。
好きなことに打ち込む学生時代は、人生でかけがえのない時間。関西学院で自分を見つけ、充実した毎日を送る学生たちの素顔を紹介します。
Kojo's Profile
関西学院中学部 3年生
田端 俊介 さん
たばた しゅんすけ/関西学院中学部3年生。J.H.C(宗教部)副部長。グリークラブ部長。4歳からピアノを習い始め、初等部4年生の時にクラスメートに頼まれたことがきっかけで作曲を始める。2015年公開の映画「戦国の勝者」で音楽を担当。
中学部2年生で映画音楽を手がけた田端俊介さん。
作曲を始めたのは、初等部4年生のときにクラスのテーマソングを作ったことがきっかけだそうです。
田端さんの才能が開花した、中学部の生活について聞きました。
音楽が好き ただ純粋な気持ちで続けてきた
僕は初等部から関西学院で学んでいます。音楽が好きで、グリークラブに入り、J.H.C(宗教部)では文化祭でミュージカルをしたりもしています。
音楽との最初の出会いは、4歳から習い始めたピアノです。初等部4年生からの3年間はミュージカルにも何度か出演しました。とにかく「好き」という純粋な気持ちだけで今まで音楽を続けてきたように思います。ずっとピアノを続けてきましたが、初等部の4年生のとき「作曲」をする機会に恵まれました。クラスで「テーマソングを作ろう」ということになり、クラスメートの1人が作詞してくれたものに、僕が曲をつけることになりました。
その後、5年生でも同じようにクラスのテーマソングを作ることになり、クラスのみんなにアンケートを取って、どんな曲がいいかを考え、みんなの希望に沿うように作るのは初めての経験でした。とても新鮮で楽しかったです。その頃から「本格的に曲作りがしたい」と意識するようになりました。
中学部2年でチャンス到来 映画音楽を手がけることに
中学部2年のとき、「映画音楽を作らないか」と声をかけてもらったことは、僕にとって大きな転機になりました。同級生のお父さんがプロデューサーをされていた映画で、僕が作曲をしていることを知り、チャンスをくれたんです。 作品は、2015年9月に公開された井上泰治監督の作品「戦国の勝者」という映画です。戦国武将の池田勝正が主人公の時代劇なのですが、2015年の1月に頼まれて夏までの半年間で15曲すべてを仕上げました。
曲作りは、台本を読んで全体をイメージして、まずはテーマ曲から手がけました。映画内の挿入曲は、シーンを見ながら場面に合うように作曲。監督からは「もうちょっと哀愁を」とか、「悲しみの中に生きるエネルギーを込めて」など、中学生の僕にはまだ理解できないような難解なオーダーもありましたが(笑)。この経験を通して技術面でも向上できたという実感はあります。それまでは自分が好きな音楽を作って楽しんでいましたが、映画音楽は「監督のイメージにどう応えるか」が大切です。この経験を通して、「人の求めるもの」に合わせて音楽を作る楽しさに目覚めました。
今年2月に2作目が公開 人生の深いテーマを音楽で表現
中学部3年になって、再び同じ監督の作品で音楽を担当させてもらえることになりました。第二弾は、今年2月に公開されたばかりの映画「すもも」です。「すもも」は「教育」と「障がい」という二つの大きなテーマを軸に、幕末という激動期の信州を舞台に日本と日本人の素晴らしさを描いた作品です。
監督が作品を通して伝えたかった「困難を乗り越えるエネルギー」と、「そこにある優しさ」を音楽で表現したつもりです。2度目なので、自分では前よりよくできたかなと思っています。夏には海外の映画祭にも出品されるそうでとても楽しみにしています。
人の求める音楽を作りたい 本格的に作曲の道へ
僕は、音楽そのものが目立つのではなく、聴くことで自然と心の中にその場面が蘇るような音楽を作りたいと思っています。映画が完成して映像と自分の音楽がバッチリ合っていたときは、言葉では言い表せないほど感慨深いものがあります。将来は、映像に合わせた音楽を作る仕事をしていたいです。
そのために、中学部2年のときに本格的に作曲を習い始めました。曲作りは楽しい作業ですが、クラシック理論なども身につけて、基礎固めからしっかりやっていこうと思っています。また、自分の人生経験や心の感動がすべて活かされる仕事だと思うので、いろんなことを経験して、心や感性の引き出しも増やしていきたいです。
グリークラブにJ.H.C(宗教部)クラブ活動にも熱中
僕の今の音楽活動は、ピアノと作曲、グリークラブの3本柱です。ピアノと作曲は習い事なのでひとりで音楽に向き合って上達をめざしていますが、グリークラブは僕にとって「仲間と一緒に音楽を楽しむ場」です。クラブ活動を通して、「音楽は仲間がいれば何倍も楽しめること」「ひとりではできないことがたくさんあること」を教えてもらっています。
グリークラブにはもともと歌が好きで入ったのですが、10月のグリークラブフェスティバルや11月の文化祭など、大きなステージに向けてみんなで一丸となって練習したり、舞台に立って大勢の人の前で合唱したりするのは本当に楽しいです。6月には高等部と合同で合唱祭もあります。高等部の先輩と合同の活動を通して、先輩たちから学ぶことも多いです。
また、グリークラブの部員から「曲を混声三部合唱に編曲してほしい」と頼まれたり、友達から編曲を依頼されたりするのも、僕にとってはとても嬉しいことです。音楽で人に貢献できたり友達になれたりするのは素晴らしいことだと思います。
僕は、J.H.C(宗教部)の副部長もしています。J.H.Cの主な活動は毎日の礼拝のお手伝いと木曜日の朝の礼拝の運営です。さらに、文化祭ではJ.H.Cで劇を公演しています。劇の舞台で演じる物語を通して「愛」など聖書のメッセージを伝えるもので、僕は脚本と音楽を担当しています。曲を書いたり歌ったり、楽器を演奏することはもちろん、文章を書くことも好きなので、脚本作りも楽しんでやっています。
僕はきっと「ものを作る」ことが大好きなんだと思います。関西学院で過ごしていると、自然と自分のやりたいことが見えてきて、思っていることや求めているチャンスがどんどん向かってきてくれているように感じます。
高等部に進んでも、グリークラブを続けて、学校生活の中にも音楽を取り入れていたいです。
体力作りは毎日の駆け足 勉強は、授業を大切に
クラブ活動や音楽活動以外で頑張っていることは、毎日の「駆け足」です。中学部では、週に4回、7時間目に15分間全員で駆け足をします。
僕は文化部なので、何もしないでいると運動する機会は体育の授業だけになってしまいます。運動不足にならずに健康的な生活を維持するためにも、駆け足の時間はとても貴重です。せっかくの時間を有効に使うために、毎回真剣に走るようにしています。15分という短い時間ですが、6時間目が終わったらなるべく早くグラウンドに出て人より先に走り始めます。最低3周走ればいいという決まりなのですが、だんだん記録が伸びていくのが楽しくて自己挑戦を続けています。1年生のときはどう頑張っても6周か7周しか走れなかったのが、今では余裕で8周(6.4キロ)も走れるようになりました。自分で毎日走ろうと思うとなかなか続けられませんが、学校生活の中に15分でもこのような時間があるのはいいことだと思います。
勉強は、授業の時間内になるべく吸収するようにしています。放課後は週4回のグリークラブとピアノや作曲の習い事でほとんど予定が詰まっているので、授業中の過ごし方が大切だと中学部に入って気づきました。授業中は集中して先生の話を聞き、その場で理解することを習慣にする代わりに、自宅学習は宿題を中心に最低限。いくら部活や音楽が忙しいといっても勉強をおろそかにするわけにはいかないので、メリハリをつけて勉強しているつもりです。中間、期末試験の前だけは、2週間前からテスト勉強をするようにしています。
自分に与えられたチャンスに全力で取り組みたい
初等部と中学部の9年間、関西学院で学んできました。9年の間にいろんなチャンスに恵まれたおかげで、まだ中学部3年生でありながら「映画音楽の作曲家」という将来の夢を見つけることができました。そして、それに向かって一直線に歩けていることは、とても幸せなことだ思います。
そして僕の夢をいつも一番近い場所で一緒に応援してくれている家族にも感謝しています。
映画音楽は、クラシックや民族音楽、ジャズなどいろんなジャンルの音楽が求められます。どんな分野であっても監督やプロデューサーが求める音楽が作れるように、これからもジャンルを問わずいろんな音楽を聴いたり映画を観たりして、自分の感性を磨いていきたいです。
また、作曲は「自分の中にあるものを曲に反映させる」作業ともいわれます。これから人としていろんな経験をしながら、「自分の中にあるもの」を育てていきたい。あらゆる挑戦を通して自分の内面を豊かにしていきたいです。その挑戦ひとつひとつがすべて将来の自分に返ってくると思います。
高等部で新しく「これがしたい」とか「こうなりたい」といった考えは特にありませんが、高校生活では勉強や部活、礼拝、学校行事など、関西学院の日常の中で与えられている身近にあるチャンスを大切にして過ごしたいですね。何ごとにも本気で取り組むことが、自分の夢を叶える一番の近道のような気がしています。