Advanced K.G.

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Episode.3

フィールドスタディ 気候変動と社会

自発性が成果を生む。
人の意識を変える、
本当の問題解決力を。

植島 レオン(関西学院千里国際高等部・3年生)

植島 レオン(関西学院千里国際高等部・3年生)

社会の課題に取り組む高校生がいる。僕には何ができるだろう。

 「海外の高校生が海洋プラスチックごみを回収するロボットを開発」。環境問題に興味を持ちはじめていた高校1年の春、何気なく見ていたネットニュースの記事に目が留まりました。中等部からチームサイエンス(科学部)でロボットコンテストへの出場をめざしていた僕にとって、同世代の人がロボットで環境問題を解決しようと行動している事実は衝撃的でした。自分も何かしたいと刺激され、2年次のSGHの研究テーマに「気候変動をどう解決していくか」を設定。そしてSGHのプログラムの中でも、環境問題に取り組む研究者や企業に直接取材できる「気候変動と社会」のフィールドスタディへ参加を決めました。

世界の大きな課題も、僕の小さな悩みも、解決の糸口は同じなんだ。

 僕たちが最初に訪れたのは、気候変動についての研究を行っている国立環境研究所。膨大なデータを元に気候変動の経過予測や改善への取り組みについて教えていただいたのですが、僕の心に一番響いたのは「データで表れる数字を変えるには、人の意識を変えることが必要だ」という言葉でした。設備投資をしてハード面を整えることも重要ですが、人の意識を変えなければ本当の意味での解決にはならない。そして意識を変えるには目的を共有することが重要だとおっしゃるのです。例えば国が「環境のためにエアコンの設定温度を28度に保ちましょう」と言っても、その目的が伝わらなければ国民はただ我慢を強いられていると感じるでしょう。「全員の努力で温室効果ガスを◯%削減する」という大きな目的を共有して初めて、一人ひとりが自発的に行動するようになると研究所の方は続けられました。僕はこのとき、自分の所属する部活でも同じことが言えるのではないかと考えました。部長の僕が「こんなロボットを作ろう!」と一方的にゴールを示すだけでは、いいものは作れない。でも、なぜ作るのか、ロボットを作ることでなにが得られるのかを共有できたなら、部員みんなが自ら進んで行動してくれるようになり、すばらしい成果につながると思うのです。地球規模の問題と学校の部活動、遠く離れているように思えますが、根底にあるのは「一人ひとりの自発性」。問題の大きさに関わらず解決の糸口は同じだと気付いたんです。僕はこれまで人の心理や行動について学ぶ機会がなかったので、この気付きはとても新鮮でした。
 自発的な行動を促すために何ができるのか。そこに具体的なアドバイスをくださったのは2日目に訪れたEUの環境イノベーション促進機関“EIT Climate-KIC”の藤井先生です。国や企業にとって一見負荷にも思えるSDGsについて、先進国・先進企業の義務であると捉えるよりも、ビジネスチャンスだと発想を転換することができれば取り組みは飛躍的に進展すると先生は話されました。数年前まで省エネ施策に消極的だった中国が近年積極的に電気自動車の開発を進めているのも、「義務だから仕方なく、現状のものを減らす・制限する」ネガティブな考えから、「省エネ基準に対応した新製品の開発で市場を活性化する」ポジティブな考えに発想を変えたからなのだとか。考え方一つでマイナスがプラスになるのだと学びました。
 またフィールドスタディでさまざまな方から話を伺ったことで、立場の違いによって環境問題へのアプローチがまったく異なることも知りました。脱炭素化を推進する企業と、石炭火力発電の技術を海外に輸出する電力会社、真逆に見えて目的は同じ。物事は一つの側面ではなく、立場やプロセスなど多様な要素が組み合わさっています。その判断材料を、この3日間で少しずつ自分の中に蓄積することができました。

国立環境研究所へ訪問

国立環境研究所に始まり、3日間で5つの企業や研究機関を訪問。それぞれの立場から気候変動への改善案を学んだ。

身近な人の意識を変える。専門分野を学び、意識改革を自分の力に。

 フィールドスタディを終えて論文を書くにあたり、僕は自発性へのアプローチを身近な場所で実践することにしました。テーマにしたのは「千里国際キャンパスにおけるCO₂排出量ゼロへの方法」。学校でも行動次第でCO₂排出量をゼロにできる、そう気付けた人は社会の中でも能動的にエコに取り組んでくれるのではないかと考えたのです。太陽光パネルの導入方法や必要なコストなどを可能な限り具体的に調べ、論文を仕上げました。結局ゼロにすることは難しいと分かったのですが、普段何気なく過ごす学校でも環境問題解決に貢献できると証明したことで、身近な誰かの意識を変えるきっかけになったのではないかと考えています。
 僕はずっと理系が好きで、大学でも理系の学部に進むつもりでいました。ですがフィールドスタディに参加し、企業や研究機関を訪れる度に違った立場や物の見方を知っていく中で、人の意識や考え方に興味が出てきたんです。今後は関西学院大学の社会学部に進学し、心理学や社会学を学ぶつもりです。今一番関心があるのは意識改革。人の意識を変える、それは決まった答えが存在しない難しい分野かもしれませんが、どんな問題にも必ず人の意識が関係しています。この分野を追究し人の意識にアプローチすることで、物事の根底に潜む「本当の問題解決」に取り組みたいと思っています。

■参加プログラムをCHECK!

SGHフィールドスタディ

社会課題を解決するために第一線で活躍されている方々へのインタビューを生徒自身が行い、その後8000字の論文にまとめるSGHフィールドスタディ。「気候変動と社会」では夏休み中の2泊3日を利用して温暖化対策に取り組む企業や研究者、政府機関などを取材します。立場や事業領域の異なるさまざまな企業・機関の方に話を伺うことで、「多角的に物事を捉える視点」「他者とのコミュニケーション力」「問題解決に取り組む姿勢」などのスキルを高めます。

 
 
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