Advanced K.G.

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Episode.2

社会探究実習
瀬戸内海・豊島環境フィールドワーク

リアルな人と向き合う
研究分野を開拓したい。

内山 裕海(総合政策学部・3年生)

内山 裕海(総合政策学部・3年生)

人生の指針を見つけた、小さな島での1週間。

 瀬戸内海に浮かぶ、人口800人ほどの小さな島。豊島で過ごした1週間は、私の人生観を大きく変えるものでした。1時間半もあれば自転車で1周できるほどの島の中に、私の知らない人々のそれぞれ違った人生があり、途方もない時間をかけて紡がれてきた豊かな暮らしがある。思えば当然のことですが、そんな“あたりまえ”に気付けたことが、私にとって大きな財産になりました。
 ハンズオン・ラーニングの「瀬戸内海・豊島環境フィールドワーク」を知ったのは、学部の仲間から瀬戸内国際芸術祭の話を聞き、アートで島が活性化するってどういうことだろう?と興味を持ちはじめていたときのことです。島にどのような暮らしがあり、またどのような課題があるのか。豊島の社会を知ることを目標に、1週間現地に滞在しながら調査に取り組むというプログラム内容に惹かれ、迷わず参加を決めました。事前学修で個人の研究テーマを決めるのですが、その際に先生から何度も言われたのは「島の方を調査対象としてではなく、同じ目線で一人の人として見ること」という言葉。調査に行くのに調査対象として見ないとはどういうことだろう。その意味をつかみきれず、肝心の研究テーマも曖昧にしたまま私のフィールドワークはスタートしました。
 「アートで島は活性化したと思いますか」。島を散策し、出会った現地の人々に質問してみるのですが、返ってくるのは当たり障りのない答えばかり。アートプロジェクトが始まってから、きっとさまざまなメディアで同じ質問を受けてきたのでしょう。せっかく現地で調査しているのに、これでは調べ学習と変わらない。私はとても焦りました。島の方を“調査対象”として見てしまっているからだろうか。悩みに悩んだ末、取り組んでいる調査のことは一度忘れ、島での暮らしそのものを知ることから再スタートすることに。島の方に今日の食事や家族とのできごとなど、なんでもない日常の話をお聞きする方針に切り替えたんです。すると以前とは変わって、会話が生き生きとしてきました。家族が島外に出てしまい寂しくなったけれどお盆やお正月の帰省を楽しみにしている方。今日のご飯は隣の小豆島で買ったお弁当だと笑うフェリー乗り場のスタッフの方。豊島に魅了されて結婚を機に家族を連れ、移住された方。“豊島の島民”と一括りに言っても、一人ひとりの価値観や人生はまったく違い、それぞれの方が意思をもって暮らしている。それはインターネットでは決して見つけることができない、豊島のリアルな顔でした。「地域を知る」とは、実はこんなふうに人の姿を知ることなのかもしれません。

個人研究のテーマは「てしまのごはん」

個人研究のテーマは「てしまのごはん」。海側では魚介類、のり工場の近くではのりの佃煮など、地図上にエリアの特徴をまとめた。

まだ誰も成し遂げていない道。不安も大きいけど、何かが始まる予感に胸が高鳴る。

 私が関学の総合政策学部を選んだのは、建築について学びたかったからです。なぜ他大学の工学部建築学科を選ばなかったのかというと、実は建築という専門分野に対して小さな違和感を感じていて。それが何なのか、ずっとうまく説明できずにいましたが、豊島で過ごしたことで答えが分かったんです。違和感の正体、それは建築が材料学や物理学というモノ中心の学問であること。自分が関心を持っているのは、ハードとしての建築より、人の暮らしに密着したソフトとしての建築なのだと気付きました。それからは、もっと人に着目した研究ができないだろうかと考えるようになりましたね。個人とその人の望む暮らしを研究していけば、新しい建築のあり方を示せるのではないかと思っています。ただリアルな人を対象とする研究は科学的・論理的なアプローチが困難なため、取り組んでいる研究者はごくわずか。私に一つの方向性を示してくださったのは他大学との合同授業で出会った地震学者の大木准教授です。先生は学者でありながら自ら現地に出向き、そこに暮らす方々の意見を聞きながら地震の知識や備えについて伝えられているのです。知識も技術も、活用できなければ意味がない。だからこそ人の暮らしに向き合い、個人に対してアプローチする。そんな先生のやり方こそ私のめざす道だと共感しました。今後は大学院で人文学を学びながら、人の暮らしに密接した研究とその知識を生かすフィールドを模索するつもりです。未開拓の研究分野のため悩みや不安もありますが、今までにない楽しみが待っていると信じ、未来を切り拓いていきたいです。

■参加プログラムをCHECK!

社会探究実習

現代社会を具体的なフィールド(現場)で考え、その中で自ら課題を設定し探究することを目的としたプログラムです。産廃問題を抱えながら、近年では瀬戸内国際芸術祭が開催されアートの島としても知られる香川県の豊島に約1週間滞在し、産廃現場視察や地区役員からのレクチャー、住民への聞き取り調査を踏まえ、住民との意見交換会などを実施。「環境」や「コミュニティ」などをキーワードに、常に個と社会とを意識しながら「豊島」を探究します。

 
 
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