Advanced K.G.

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Episode.3

関西学院世界市民明石塾

相手が求めていることを
相手の立場で“受信”したい。

大川 真里奈(関西学院高等部・2年生)

大川 真里奈(関西学院高等部・2年生)

大川 真里奈(関西学院高等部・2年生)

国連って、かっこいい。きっかけは小さな憧れから。

 中学部を卒業した春休み、アメリカに住む従兄弟に会いに行ったときに、国連本部を見学しました。初めて目にする国連の施設は、建物も、飾られている絵の一つひとつも、すべてがかっこよくて。日本人ガイドの女性が英語やスペイン語で堂々と話している姿に思わず目を奪われ、いつか自分もあんなふうになりたいと思いました。国連を意識しはじめたのは、そんな小さな憧れからです。高等部に進学してからは、国連などの国際機関の活動についてもっと詳しく知りたいと思うようになり、関学ならではのGLP(Global Leadership Program)に挑戦。この特別プログラムでは、発展途上国の現状や支援の方法などについて勉強しています。また、このほかにも国連フォーラムなど学外のプログラムにも参加し、国連の取り組みや課題について学んできました。ただ学外のプログラムの多くは大学生が主体のため、年下の私は意見交換のスピードについていけないこともしばしば。高校生同士で国際問題について話し合う場があれば…と思っていたんです。2年生になり、全国の高校生を集めて国際教育を行う「世界市民明石塾」のことを聞いた時は、元国連事務次長の明石康先生から貴重な話が聞けることはもちろん、幅広く同世代との意見交換ができそうだというところにも魅力を感じ、参加を決めました。

明石康塾長の基調講演

開催初日に行われた明石康塾長の基調講演。グローバル人材には異文化理解とともに「受信力」が必要と語られた。

同じ意識を持つ高校生たちと世界の問題を語り合う。その中で知ることになった「受信力」という言葉。

 明石塾は、私にとって本当に特別な経験になりました。国際問題について意識の高い同世代が集まっているので、積極的に発言しても冷やかす人はおらず、それ以上の熱量で返してくれるんです。受講した講義も内容の濃いものばかりでした。特に印象に残っているのは、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)がなぜ必要なのかを、現代から2030年までの世界を体験しながら学ぶ「2030 SDGs」というカードゲームを使った授業。プレーヤーはひとつの「国」としてゲームに参加し、与えられたお金と時間を使ってプロジェクトを進めます。例えばある国が「交通インフラの整備」というプロジェクトを実行すると、経済効率が上がるので「経済」のポイントは増えますが、土地が切り開かれるため「環境」はマイナスに。各国は、この経済・環境・社会のバランスを見ながら、国の総合的な発展をめざします。参加者はみんな国際協力の必要性を学んでいる人ばかりなので、きっと最後には理想的な世界にたどり着くだろうと思っていました。ですが実際にゲームを行ってみると、前半を終える頃にはどの国も「経済」だけが発展し、「環境」や「社会」を置き去りにした、いわば現代と同じような世界ができあがっていたんです。地球規模の問題解決には国際協力が必要とわかっているのに、いざ当事者になると自分の利益を追求してしまっている。自分たちの理解がいかに表面的だったかを知り、とても驚きました。そこで後半は、前半の反省を生かし各国間で協力しながら進めることに。するとゲームが終わる頃には、経済力は前半より減ったものの、環境や社会とのバランスのとれた私たちの理想的とする世界をつくることができたんです。このゲームをうまく進められたのは、全員が平等な条件のもとに協力し合えたから。協力することの難しさ、そして国際社会にフェアな関係性を築くことの重要性を、身をもって学ぶことができた貴重な体験でした。

 また元国連事務次長の明石先生のお話は、考えさせられる内容ばかり。その中で特に心に残ったのが、「受信力を身につけなさい」という言葉です。国際協力のためには、相手が今なにを求めているのかを理解すること、つまり相手の考えを敏感に察知し、受け止める力が必要。そんな意味合いの言葉ですが、私はそのときは正しく理解できず、講義が終わってからも「受信力」の意味を考え続けていました。

2030 SDGsカードゲーム

カードゲームを使って2030年までの世界の流れを体感。後半にはプレーヤー同士で話し合い目標達成をめざした。

自分たちも役に立ちたい。でも、気持ちだけじゃだめなんだ。支援する側に必要なのは相手の立場に立って物事を考える力。

 明石塾の前半の講義を終えた夏休み。私は海外フィールドワークに参加し、カンボジアを訪れました。初めて目にする発展途上国は、土がむき出しの道路から土煙が上がり、辺り一面赤茶色の世界。水上集落などインフラの整っていない場所を次々に見学し、現地の方の話を聞いて生活の問題などを具体的に知るうち、自分も何かこの土地の役に立ちたいという気持ちが湧いてきました。参加メンバーのみんなも同じ気持ちだったようです。遺跡修復に携わる方のオフィスに行ったとき、参加者の一人が「私たちも支援したいのですが、なにをすればいいですか?」と質問しました。すると、それまで和やかだった場が一変。現場の説明をしてくださっていた方の表情がこわばりました。「支援したいと言っただけなのに…どうして?」と驚いたんですが、後から考えると相手が怒ったのは当然のこと。なにをすればいい?という質問は、現地のことを理解できていない証拠。自分の頭でどんな支援が必要かを考えることもせず、その場の感情で質問している姿勢は、現場の方にとって、浅はかでいい加減なものに映っただろうと思います。明石先生がおっしゃっていた「受信力」が、このときやっと理解できました。相手が本当に求めていることをわかるためには、相手と同じ立場を経験して、同じ目線で考えること。明石先生はそんなことを伝えたかったんだと思います。

遺跡救済チーム 修復作業

遺跡救済チームに加わり、修復作業を体験。現地のスタッフの方から国の現状や課題などを伺った。

人とは違うたくさんの経験をしてきた私には、次につなげる責任がある。

 カンボジアから帰って明石塾の後半の講義を受けている間、私はなにか行動しないといけない、という焦りを感じていました。私は縁があって明石塾に参加して国際協力を学び、カンボジアで発展途上国の現状を知ることができました。だからこそ、行っただけで終わらせずに行動しないといけないし、知らない人に伝えないといけない。最初はただ国連に憧れていただけの私でしたが、いろいろな経験を重ねるうちに、自分の中にそんな使命感が芽生えていました。そこで、手始めとして今は明石塾の仲間と共に関西高校生のSDGsネットワークを構築し、いずれ高校生主催の国連フォーラムも実現しようとしています。大学生が主催する国連フォーラムにも参加できますが、高校生が中心になって作れば、同世代が同じレベルで活発に意見交換できると思うんです。まだ協力してくれる人を募っているところですが、明石塾で知り合った全国の仲間たちと一緒に、きっと実現させたいですね。今後は大学で商学を学び、その中で特にマーケティングを通じた国際問題の解決にも取り組んでいきたいと思っています。特に興味があるのは貿易やフェアトレード。発展途上国と日本がモノを通してつながれ、それが具体的な貢献につながる面白さを感じています。発展途上国がなにを求めているのか、明石塾で学んだ「受信力」の教えを胸に、一方的な支援では終わらない本当の国際協力に携わっていきたいです。

■参加プログラムをCHECK!

関西学院世界市民明石塾

将来のグローバルリーダーをめざす高校生を対象にしたプログラムです。塾長である元国連事務次長・明石康氏をはじめとする経験豊富な講師から国連や国際支援についての知識を学べるほか、ディベートやディスカッション、声明文作りなどを通して国際的な視野と主体的な課題解決力、コミュニケーション力を身につけることができます。2018年度は「Challenges for SDGs! ~Goal 1: No Poverty~」をテーマに、全国の高校から選抜された24名の高校生が参加。8月の4日間、関西学院大学西宮上ケ原キャンパスにて実施されました。