Advanced K.G.

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Episode.2

国連・外交プログラム受講

人助けという
“きれいごと”を
現実的に動かす力を。

全 澤敬(総合政策学部・2年生)

全 澤敬(総合政策学部・2年生)

誰かを助けられる力をつけたい。その想いから新しいプログラムに迷うことなく飛び込んだ。

 「本物のエリートとは何だ?」。国連・外交プログラムの授業中に村田俊一教授が突然おっしゃった言葉です。僕たちは「人が遊んでいる間に勉強をする人ですか?」などいくつか思いついた考えを口にしましたが、教授は首を横に振ってひと言。「本物のエリートは、人のために動ける人のことだ」。自分の損得ではなく、より高い視点から社会全体の利益を考えて行動できる人間こそが世の中を牽引すると教授はおっしゃるのです。かっこいいと思いました。そのセリフは脳裏に今も鮮明に焼き付いていて、学びに向き合う僕の背中を押し続けてくれています。

 僕は日本で生まれ育ちましたが、韓国籍。常に日本社会においてマイノリティの存在で、周囲から不当な扱いを受けることも少なくありませんでした。そのような環境で育ったことから、僕の中では「人は助け合って生きていかなければならない。自分も誰かのために力を使って生きていきたい」という想いが強くなり、今では自分を突き動かす信念となっています。関西学院大学の総合政策学部を進学先として選択したのも、この学部で学べば国際的な立場で人に貢献する生き方が見つかるのではないかと思ったからです。そんな動機で学んでいたため、1年次の秋に、将来国際機関での活躍をめざせる国連・外交プログラムがスタートすると聞いたときは、考える間もなく申し込んでいましたね。

国連が実際に扱った案件に自分たちの答えを探す経験を通じ、国際援助の仕組みが見えてきた。

 国連・外交プログラムの学びは、僕が想像していた以上に刺激的なものでした。それまでの授業は大教室で先生の講義を受ける形式でしたが、このプログラムは20人程度の少人数クラスで先生や意識の高い仲間とディスカッションしながら学ぶため、学びの理解度は相当深くなります。特に印象的だったのはケーススタディを通して学ぶ授業です。援助政策を専門にされている村田俊一教授の授業では、実際に国連がある国に対して援助を行った過去の実例を元に、自分たちならどう考え、どんな結論を導き出すのかをチームで試行錯誤していく課題が設けられます。僕たちはまずその国の政治・経済の実状や被害の深刻さなどを示すデータを資料として受け取り、状況を理解するところからはじめるのですが、最初はその膨大な情報量に戸惑いました。これだけの情報から何を読み取り、どう考えていけばいいんだろう。さっぱり糸口がつかめません。しかし、実際の国連職員は当然これ以上の情報を扱って判断しているはず。村田教授はかつて国連職員として活躍されていた方ですからご自身の経験も交えて、どのように課題を整理し、考えていけばいいのかという実践的なヒントを教えてくださいました。そのおかげで僕も難解な問題に対して自分なりに糸口を見つけ、問題解決のロジックを展開する方法が少しずつわかるように。最初はみんなの意見に対して「いいんじゃない」と言うばかりのイエスマンだったのが、回数を重ねるうちに自分から別の解決策を提示することもできるようになりました。

 そしてここでもう一つ役に立ったのが、僕の専攻である総合政策学部の学びです。総合政策は一つの問題に対して多角的な視点からアプローチするジェネラルな学びですから、僕も学部の授業を通して常に別の視点を探して考えるクセがついていました。これを国連・外交プログラムで与えられた課題に応用すると、例えばある国の教育問題について考えるとき、学校を建てる資金や資材が不足しているのか、国の法制度に問題があるのか、親の考え方など民族の伝統が子どもの教育を阻害しているのかといったあらゆる可能性について考え、より最適と思える解決策に行き着くことができたのです。もちろん実際の国際問題に答えを出すことは簡単ではなく、一つの打開策を出してもすぐ別の問題が出てきて、それを解決する方法を考えるとまたさらに別の問題が出てくるという繰り返し。そこには絶対的な答えは存在しませんが、仲間とディスカッションして議論を進めていくプロセスが楽しくて学びにどんどんのめり込んでいきました。

総合政策学部 村田教授

総合政策学部の教授でもある村田先生の援助政策の考え方に感銘を受け、「村田チルドレン」と自称するほど心酔。「先生は知識もすごいけど、まず何よりも紳士なんです」と語る。

複雑な利害関係を調整する力をこの場で磨いていけば、現実的に人を助けるプロジェクトを自分から動かすことができる。

 このような国連・外交プログラムの実践的な学びを通して僕が得た一番大きな気づきは、「人はきれいごとだけでは動かない」という事実かもしれません。自分自身はそもそも人助けは良いことで、みんなが積極的に行うものだと思って生きてきましたが、国際援助に関してさまざまな立場の意見を知ると、誰もがそう考えるわけではないことがわかってきました。例えば、日本が膨大な国家予算を途上国の開発支援に使っていることは非常に尊いことですが、そのような他国にかまうゆとりがあるなら国内の経済発展や医療・福祉などの充実のために資金を使うべきだという意見もあります。村田教授によれば、同じ国連職員でも考え方はさまざまのようです。しかし、そこに苦しんでいる人がいるのなら、やはり国を越えてでも救いの手を差し伸べるべきだと僕は思います。もっと人は、人と関わりを深め、支え合って生きていかなければならないはずです。そこで現在は、いろいろな立場の人がそれぞれの考えを持って行動している中で、どうやって関係者の利害を調整すれば、現実問題として困っている人を助けるというきれいごとを実践できるのかということを真剣に考えるようになりました。仲間と行うケーススタディの学びの中でも、自分はJICA、彼はアジア開発銀行、彼女は途上国政府など、それぞれの立場を決めてロールプレイングすることで、「その政策ではこちらにメリットがないから動かないよ」など、現実的な視点からプロジェクトの問題点を指摘し合うようにしました。

 僕が今身につけたいと思っているのは、人を助けるために多くの関係者を動かす現実的な力です。そのためには、まだまだロジカルに考える力が弱いと感じているので、今後も積極的に論理的な思考力を磨いて、人を説得し、動かすことができるようになりたいと思います。また国連の実例を学ぶ中で、誰もが絶対無理だと思った民族紛争の問題解決を、ある日本人のリーダーが自分の情熱で周りの人々を奮い立たせて成功させたという話を聞きました。単に思考する力を高めるだけでなく、人の心に訴えかける人間としての魅力も培っていかなければきっと僕の目的は達成できません。そして将来は自分のアイデンティティを強みとして生かし、日韓関係など国々の結びつきを深めるために、身につけた力を生かすことができればと考えています。

■参加プログラムをCHECK!

国連・外交プログラム

将来、国連・国際機関や外交官として世界の公共の場で活躍するリーダーを養成することを目的とし、国連・外交について体系的に学ぶことができる複数分野専攻制(MS)特別プログラムです。国連や外交官としての経験が豊富な教員で構成されており、担当教員による学生へのメンタリングや、授業における国連・外交の知識習得、さらには国連ユースボランティアなどへの挑戦を通じて、実践的に学ぶことで国際的なセンスを自然に身につけられます。学部での学びに加えて、指定された32単位を修得した学生には卒業時に修了証書が授与されます。

■さらなるステップアップが可能!

大学院「国連・外交コース」

国連・国際機関職員になるには修士号、語学力、そして実務経験が必要になります。大学院「国連・外交コース」では、国連・外交プログラムで培った知識や経験を基に、研究科で専門性を磨きつつ、英語・少人数・演習スタイルで国際公共分野のコンピテンシーを磨きます。