関西学院の学び 関西学院のキリスト教主義教育

ルース・M・グルーベル 院長 / 田淵 結 宗教総主事

関西学院は、その教育において「キリスト教主義」を掲げています。関西学院の「キリスト教主義」とはどのようなものなのでしょうか。また、国際化が進む時代において、それは子供たちにどのような影響を与えるのでしょうか。ルース・M・グルーベル院長と田淵結宗教総主事に「関西学院とキリスト教主義教育」について聞きました。

キリスト教の「principles(主義)」を人生の基盤に

グルーベル院長

関西学院はなぜ「キリスト教主義」を建学の精神としているのでしょうか。

グルーベル院長関西学院は、アメリカ人の宣教師で医者でもあったウォルター・R・ランバスによって創立されました。ランバス一家は1886年にキリスト教伝道のために来日し、「恵まれない人とともに豊かな人生を送るために努力しなさい」という教えのもと、教育の分野でも活動しました。当時の日本は長い鎖国の時代を終え、近代国家をめざした時代。大きく変化する世の中で、ランバスは「世界に通じる価値観や倫理観をもった新しい日本のリーダー」を育成する必要性を強く感じ、関西学院を創立したのです。

田淵教授もちろん、関西学院には「牧師を育成する」という役割もありました。ランバスは来日してから神戸や広島など各地に教会を開いていましたが、そこで宣教する牧師を育成するためにまず「神学部」を作りました。同時に作られたのが「普通学部」です。今の中学部にあたるこの学部では、キリスト教の「principles(主義)」によってキリスト教に基づく青年教育が掲げられました。キリスト教を「全人教育のための基盤」に置きつつ、「伝道」だけを学院の目的にしなかったという点で、伝道活動を目的とした「ミッションスクール」とは異なるものであったといえるでしょう。

関西学院の「キリスト教主義」とは、どのようなものなのでしょうか。

田淵教授それは、関西学院のスクールモットーである“Mastery for Service(奉仕のための練達)”という言葉に集約されています。1899年に「学校において宗教教育を施してはいけない」という訓令第十二号が発令されたことで、関西学院はキリスト教教育のあり方を厳しく考えさせられました。そこで、関西学院は実学的な「ボケーショナルスクール(専門職教育機関)」の要素を取り入れたのです。その時、第4代ベーツ院長はランバスの精神を“Mastery for Service”という言葉にして提唱しました。「社会や世界に仕えるため、自らを鍛える」という意味で、これはまさに関西学院人のあり方を示しています。自分を鍛えて手に入れた能力を自分の名誉や欲望のためでなく世界のために捧げること、“Mastery for Service”をビジネスでの働きを通して実践することこそが、関西学院の「キリスト教主義」なのです。

グルーベル院長“Mastery for Service”と聞いてキリスト教と結びつける人は少ないと思うのですが、聖書に「あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり、いちばん上になりたい者は、皆の僕(しもべ)になりなさい」(マタイによる福音書第20章26・27節)という教えがあるように、実はとてもキリスト教的な言葉です。関西学院の卒業生は社会に出てからも“Mastery for Service”の精神の大切さを改めて実感する人が多いのですが、それは学生の間に知らず知らずのうちに身に染みついたキリスト教の教えでもあります。

「世界共通の価値観」をもった国際人として

田淵教授

子供たちは日々、どのような形で「キリスト教主義教育」に触れているのでしょうか。

グルーベル院長日本にはキリスト教主義の学校がたくさんありますが、そのスタイルはさまざまです。キリスト教の授業を必須科目としない大学も多いのですが、関西学院大学ではキリスト教学を必須としています。日本はお祭りなどの行事は多くありますが、「宗教の哲学」を知る機会が少ないので、このような授業で初めて宗教に出会う人もたくさんいるようです。

田淵教授授業以外では、初等部から高等部の朝の礼拝や聖書の時間、チャペルアワーなどがあります。入学式など学内の大きな行事は、全て「讃美歌を歌い、聖書を読み、お祈りをする」という礼拝の形式で行っています。入学式で初めて礼拝を経験された人も多いかもしれませんね。また、アメリカンフットボール部は試合の前に「関西学院らしく戦えるよう」祈りを捧げるなど、日常のあらゆる場面にキリスト教が自然に溶け込んでいます。前号でもお話ししましたが、ヴォーリズ建築のキャンパスに身を置くだけでも、キリスト教の教えや神に守られる安らぎが自然と感じられるものです。結婚式を関西学院のチャペルで行う卒業生も多いですね。

グルーベル院長また、学生の間では、ボランティア活動がとても盛んです。例えば、アジア各地の住環境の改善に取り組む「Eco-Habitat関西学院」は、ハビタット・ジャパンの学生団体としてもっとも歴史が長く、20年近くも活動を続けています。ほかにも、災害時には現地に赴いて自分にできることを探すなど、学生たちは特に意識することなく自然な形で“Mastery for Service”を実践していると感じています。

「キリスト教主義教育」は、国際化社会において子供たちの将来にどのように役立ちますか。

グルーベル院長まず、キリスト教の歴史やスピリットを学ぶことで、さまざまな宗教が見えてきて、世界に視野を広げることができます。キリスト教徒は世界人口の3分の1を占めます。イスラム教やユダヤ教とも近いものがあるので、キリスト教を学ぶことは世界の文化や価値観を理解するのに大いに役立ちます。

田淵教授そうですね。ランバスは明治時代に「日本が近代国家の一員となるため、世界のことをもっと知らないといけない」と考えました。それは現代においてもいえることで、「キリスト教を知る」ことは、「世界を知る」ことに通じます。ランバスは1891年に関西学院を離れて、ブラジル、アフリカ大陸、ロシアなどに渡りましたが、どこへ行っても活躍することができたといいます。それはランバスが「キリスト教」という世界的に共通する価値観に基づいて仕事ができたからではないでしょうか。世界の人とコミュニケーションをとるためには「英語ができる」ことよりも、まずは「共通の価値観をもっている」「国際的な常識を知っている」ことが大切なのです。

グルーベル院長関西学院には「国際社会に貢献する有能な世界市民を送り出す」という大きなミッションがあります。「キリスト教主義教育」は、それを果たすために関西学院が建学当初から今日に至るまで一貫して受け継いできた理念です。ぜひ保護者の方もキャンパスに足を運んでいただき、関西学院のキリスト教主義教育に触れ、お子さまとともにより豊かな人生を歩むための道しるべとしていただければと思います。

グルーベル院長/田淵教授

毎月第2第4日曜日の午前10〜11時、関西学院会館ベーツチャペルで教職員・学生有志による礼拝が行われます。一部英語を用いるバイリンガル形式。保護者や同窓の皆さまをはじめ、どなたさまでもご参加いただけます。どうぞお越しください。