Advanced K.G.

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Episode.1

国連ユースボランティア

インドネシアに、
ボランティアの灯火を。

米田 奈央(法学部・3年生)

米田 奈央(法学部・3年生)

リアルな声を世界に発信して、
人の心を動かそう。

今まで知らなかった、他国の実情。私が学んだ知識で彼らを助けたいと、国連への想いがつのった。

 私が国連に興味を抱いたきっかけは、中学3年生の頃に観た“スラムドッグ$ミリオネア”という映画でした。画面に出てくるのはスラム街やギャングの姿。インドが急速に発展を遂げた裏には格差社会や児童虐待などさまざまな問題があり、世界にはゴミ山に住んでいる人や学びたくても学べない子どもがいるという事実にショックを受けました。安心できる家があり、学べる環境にあることがいかに恵まれているかに気付き、恵まれた環境にいるのであれば身に付けた知識によってこの人たちを助けたいと思うようになりました。国際協力に興味を持って以来、「国連の職員となり、社会を変えていくこと」が私の夢になりました。関学に受験を決めたのも、国連で働くボランティアの派遣や調整を行う機関「国連ボランティア計画(UNV:United Nations Volunteers)」とアジアで初めて協定を締結した大学だったからです。特に関学は「国連ユースボランティア」という学生を開発途上国にボランティアとして派遣するプログラムの基幹校でもあります。入学後は、早く国連ユースボランティアに参加したいと思う日々が続きました。実際に国連ではどのような人がどのような業務に携わっているのか。将来、国連で働くために今何が必要なのか。このプログラムによって、国連の実情をきちんと知り、自分の立ち位置を理解できるはず。「夢への第一歩」となると思うと、待ちきれませんでした。
 もちろん希望者全員がプログラムに参加できるわけではなく、学内選考に加えてUNVによる選考も通過しなければなりません。選考では英語力のほか、国際協力に関する基礎知識が問われました。さらに、現地での業務内容の中には、ウェブサイトやポスター作成などの広報活動も含まれていたので、選ばれるためにはそれらの実務能力をアピールする必要もあるのです。私は自分自身を紹介するウェブページをつくってブログをアップしたり、画像編集ソフトを使ってポスターを製作したりと、慣れないことにもどんどん挑戦しました。このような選考を通して、現地で実際に活動するためには本当にさまざまな力が必要になると感じ、安易な気持ちでは行けないという覚悟ができました。
 さらに、選出されたあとには学内で研修も行われます。国際協力の場でよく使われている課題解決法「プロジェクトサイクルマネジメント」や広報で取り扱うICTの実践授業、画像編集ソフトの使い方など、学ぶことはたくさん。そのほかにも外務省を訪問して開発に関する講義を受けたり、開発途上国の支援に携わった経験を持つ方々のお話を聞く機会もあり、実践的な力が磨かれました。

現地広報団体と一緒に仕事

現地広報団体と一緒に仕事をすることも。最初のうちは会議に数時間もかかっていたものの、回数を重ねるうちに自分の力で進行ができるようになっていった。

赴任先でのミッションは、広報。
よりリアルな声を伝えたことが共感を呼び、次のアクションにつながっていく。

 2016年秋。選考から約10ヵ月の期間を経て、ようやく国連ユースボランティアの派遣先へ。私が派遣されたのはインドネシアのUNV事務所です。そこで任されたのはUNVインドネシアについての広報活動。「ボランティアリズム」の推進を全世界に向けて行ったり、ボランティア活動の促進や参加の呼びかけを行うことが主なミッションでした。私が行った当初、インドネシアではUNVという存在があまり知られていない状態であり、広報らしいことは手付かずで、UNVインドネシアのFacebookは更新がずっと途絶えたまま。UNVやその活動を知ってもらうためには、多くの人に情報を発信する事ができるSNSを活用することが大事だと思い、Facebookの立て直しから着手しました。早速ボランティアの情報を収集して、記事を投稿。しかし、なかなかフォロワーは増えません。いったい何が課題なのか。どうしたらいいのかが分からず、自分ならどんな情報が欲しいかという視点に立って考え直してみたところ、私がこのプログラムに参加する前に、いろいろな人のボランティア体験談を読んでいたことを思い出しました。そこで、UNVを通してボランティア活動をされているインドネシア人に連絡を取り、取材をして実際のボランティアはどのように行われているのかを紹介することに決めました。赴任先はどのような国で、どんな支援が必要なのか。そこでの生活はどのようなものなのか。記事を見た人がボランティアの活動について具体的に思い描けるような、よりリアルな声を投稿していきました。すると、「参加したい!」「どうやったら参加できるの?」とたくさんのコメントが寄せられるように。正直、こんなに反響があるとは思わなかったのですが、コメントやフォロワーの数字が増えていくたびに、ボランティアの輪が目の前で広がっているという手応えを感じ、自信になりました。そこからはUNVやボランティアについてより知ってもらうため、「ボランティアリズム」についての紹介をしたり、閲覧者に「ボランティアリズム」について問いかけたり、UNVインドネシアの想いを伝えたり…と、Facebookを通してさまざまなコミュニケーションを図っていきました。

  • パソコン作業

    職場ではパソコン作業がメイン。Facebookの更新やボランティアとのやりとりなど、広報活動には欠かせない。

  • 「PDCA」シート

    仕事を振り返るための「PDCA」シート。案件ごとに書き込んで、自身の課題や改善策を考えていった。

理想と現実のギャップで、夢が揺らぐ日々。
でもその悩みが、逆に、まっすぐ夢を追いかける力に。

 国連での日々は、とても刺激的なものでした。職員の方はランチタイムのときですら、世界情勢や自国の社会について議論を続けているんです。「インドネシアの未来について」「インドネシアと日本の違いについて」など、誰かが何かのテーマをあげるとポンポン意見が飛び交います。そのスピードや内容について行けなかったり、意見を求められても答えられないことが度々ありました。さまざまな事柄に対して常に考えるクセをつけておかなければ、彼らと同じレベルに到達できないと痛感しました。
 また、仕事を続けている中で、思い描いていたイメージとのギャップに悩んだこともあります。そもそも私が国連で働きたいと思ったのは、スラム街などで困っている人たちを助けたいから。ですが私が国連職員として働いている事務所は、インドネシア中心部の大都会。電気がついて、冷暖房も完備されている所で、ずっとオフィスワークをしているんです。街を歩くと身体障がい者の方がいたり、線路沿いに暮らす人がいるものの、関わることはほとんどありません。ましてや正式に国連職員になった場合、お給料をいただき、支援するべき人たちよりもいい生活をしていくことになるのです。「本当にこれでいいの?」と、小さい頃から抱いていた支援のイメージとのギャップに戸惑いました。そんなときに、ユニセフで活動をしている日本人職員の方と偶然お話しする機会がありました。思い切ってその悩みを打ち明けると、「私はそんな引け目を感じる必要はないと思う。あなたが国連職員として自分の能力をきちんと発揮すれば、ボランティアに参加してくれる人は必ず増えていく。そしてそれが、困っている人たちの救いになる。あなたの頑張りが、彼らの助けになるのよ」という言葉が返ってきました。中学生の頃に考えていた「自分が学んだ知識によって、人を助ける」という夢がよみがえり、私の進むべき道は間違っていないと迷いを払拭できました。

出張授業

大学での出張授業の様子。ボランティアとして活動している人の話に、学生たちは熱心に耳を傾けていた。

インドネシアの若者にも、ボランティアの情熱を。
5ヵ月間の想いを込めたアイデアが、その礎になった。

 約5ヵ月におよぶ国連ユースボランティアも、いよいよ残りわずかになった頃のこと。UNVインドネシアのFacebookのフォロワー数は当初の目標を達成していましたが、もっとボランティアについて知ってもらい、活動を広める方法はないかと日々模索していました。その中でふと思い付いたのは、私自身が関学のプログラムによって国連とつながることができたように、インドネシアの若者にも国連とつながることができる場を設けるということでした。Facebookの記事への反応でも分かるように、ボランティアに興味を持っている人自体はとても多いのです。だからその人たちがボランティアについてもっと深く知り、実際にアクションへとつながる場があれば、きっとインドネシアの人たち自身でもこの国を変えていけるはず。そこで私は、大学への出張授業を考えました。ボランティア活動をされている方を講師として招き、よりリアルな声を学生たちに届けることで、ボランティアの輪を広げていこうと思ったのです。
 このプロジェクトは、まず企画を認めてもらうことからスタートしました。多くの人に共感してもらえる企画書をつくるため、活動期間中に体験したことや感じたこと、SNSを通して出会った人たちを振り返り、さらにインドネシアの大学生へのヒアリングも行ったり、ボランティアの意義や目的を自分でも改めて考え直し、突き詰めていきました。上司からのアドバイスももらいつつ、なんとか企画書が完成。上司からも大学側からも、OKをもらうことができました。次にボランティアについて語ってもらうスピーカーの手配。しかし、案外これに苦戦しました。約20人ものボランティア経験者に出演依頼のメールを送ったのですが、待てど暮らせど反応はなし。「みんなはボランティアを広めたいと思っていないの?」と、少しショックを受けました。ですが諦めきれず、もう一度一人ひとりにメールを送ることに。最終的には自分の脚を使って会いに行き、直接交渉までしました。しかし、それでもなかなかOKはもらえません。苦戦が続く中で気付いたのは、いくらボランティアといえども、人はそこに成果を求めているということ。そこで、いかにこの出張授業が人の助けになるか、あなた(スピーカー)のためになるかなどを伝えると、ようやくOKと言ってくれる人が現れました。私の熱意が伝わったのです。そうして、いよいよ出張授業当日を迎えました。私の目の前にあったのは、教室に詰めかける約50人の学生の姿。スピーカーの体験談やボランティアへの想いに、誰もが熱心に耳を傾け、その目は輝いていました。
 帰国日程が迫っていたこともあり、私が実際に携わることができたのは、その一つの大学の講演だけでした。しかし、のちに聞いた話では「私の大学でもしてほしい!」と他大学からの問い合わせが続いたそうです。その声に応えるため、この出張授業はUNVインドネシアの活動の一つとして、現在も取り組まれています。
 今回の活動は、現地へ赴いて直接誰かを助けるというものではありませんでした。しかしFacebookや出張授業といったアイデアとアクションによって、多くの人がボランティアへの行動を起こすきっかけをつくることはできました。今後それによって、何十人何百人というボランティアが生まれてくるかもしれません。小さなきっかけでも世界を変えていけるんだと、このプログラムを通して実感しました。だから私は国連職員になって、多くの人を助けるベースをもっとつくっていきたいです。

■参加プログラムをCHECK!

国連ユースボランティア

関西学院大学が国連ボランティア計画(UNV)との協定に基づき、学生を開発途上国にボランティアとして派遣するプログラムです。これまでに90名の学生が開発途上国で活動を行ってきました。派遣学生は、約5ヵ月間、アジア、アフリカ、大洋州など主に開発途上国の国連諸機関に派遣され、ウェブサイトやポスター作成などの広報活動やプロジェクト運営支援などを通して、教育・保健衛生・環境・ジェンダー・貧困削減などの活動に携わります。